ねお

インサイド・ヘッドのねおのレビュー・感想・評価

インサイド・ヘッド(2015年製作の映画)
4.6
15.07.24(字幕)
15.07.18(吹替)

「トイ・ストーリー3」以降(かつての黄金期に比較しては)低迷していたピクサーが送る久しぶりの傑作。"悲しみはどうして必要なの?" - そのシンプルだが核心をついた疑問に、同じくらいシンプルでかつ偽りのない答えを示してみせる。

ライリーの中の感情を司る5人のキャラクターはどれもユニーク。前半、またエンドロールでライリー以外の人々の脳内が示され、どのキャラクターが主導権を握っているかでその人の個性を表すのが見事。
また人間の思い出や経験、すなわち記憶や、その性格や心理状態との繋がりを、これ以上ないかたちで視覚化している。言葉で定義しようとするとどうしても難しい哲学の話になるというのに、アニメーションでファンタジックに現すとこんなにもすっと理解できかつ納得のいく楽しいものになるとは。

そして語るべきはそのストーリー。
唯一プラスの感情に思えるヨロコビを過度に賛美せず(むしろ態度からは時に若干の不快感さえも感じさせる)、危険から身を守るビビリ、自分の主張を表現するイカリ、嫌なものを避けるムカムカ、そして人の気持ちを理解するカナシミ。どの感情にもプラスの面とマイナスの面があり、それぞれの感情はどこかで繋がっている。
そしてどの感情も悪意なく「ライリーのため」を思って行動するのが実に良い。その結果がどうあろうとも、それが成長するため、大人になるために必要なステップなのだ。

実を言うと、終盤、涙が止まらなかった。これほど泣いたアニメーションは記憶に無い。我々のような大人だけが泣く映画、或いは小さな子どもだけが泣く映画というのは数あれど、大人も、子供も、感動の涙を浮かべて劇場を後にする映画はそうない。必ずや歴史に残るピクサーのマスターピース。是非この夏見て欲しい作品だ。
ねお

ねお