ベンジャミンミン

007 スペクターのベンジャミンミンのレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
2.5
よく言われているようにダニエルクレイグボンドはそれまでのボンドに比べてシリアスな作りになっている。シリーズでも異色のボンドなのだ。その点において、こんなの007じゃない!とアンチも一定数いたのである。そんな中、前作『スカイフォール』で007シリーズは原点回帰を果たしたとされている。従って、今作に求められるのは、今までのクレイグボンド作品で問われていなかった、「ボンド映画らしさ」というのを再び取り戻すことだと思う。

…と、ここまで偉そうに語ってきたが、いかんせん自分は007クソニワカである。だからあくまで、『私を愛したスパイ』『ムーンレイカー』『ロシアより愛を込めて』『ゴールドフィンガー』の4本をみた印象です(ちなみにあまり考えずにこの4本を選んだけど、どうやら『女王陛下の007』と『007は2度死ぬ』を観ておいた方がいいらしいです。)。

それで、スペクターをみた印象はというと、結局のところ基本的には今まで同様シリアスなクレイグボンドだということである。確かに、ド派手なアクションやらスパイ道具やらはあるし、過去作のオマージュもたくさんある(らしい)のだが、それがどうしたというのか。自分がかつてのボンド映画をみて感じたものはそういったものではなかった。

もし、良い意味でのバカっぽさを出すならばより荒唐無稽感のあるアクションやスパイ道具を出すべきだと思うし、人を殺して捨てゼリフをはじめとした、ウィットに富みすぎたセリフが全然足りない。つまりユーモアが足りないと思う。あの場面は「ケアレス」なんかじゃなく「タマなし」くらいはいって欲しかった(それだとCにならないかもしれないけど)。

逆に古き良き渋いボンド映画を目指すならば(そうであってもユーモアはボンド映画には必要だと思うが)、もっと情報戦やらサスペンスやらで物語を引っ張っていくような演出がなされるべきだったと思う。

しかし、肉体派で硬派な感じのダニエル・クレイグである以上、かつての雰囲気というのは出せないのかもしれない。そもそも、ショーン・コネリーのボンドだって今から見れば「エロオヤジ」と思われかねないものだ。いくらダニエルクレイグが「あった直後に瞬間セックス」をモニカ・ベルッチとやろうとも、どうしても「女を抱きまくるプレイボーイ」感は出せないのだ。

また、敵役のクリストフ・ヴァルツの無能さもとても気になった。基本的には油断して自滅しているだけである。とても小物に見えた。まだ核兵器で世界を滅ぼそうとしてる悪者なら愛すべき小物に見えたのかもしれないが……。

このような諸々のノレないが重なって、個人的には原点回帰というよりかは、「ちょっとオシャレで軽い慰めの報酬」といったように感じた。

だがしかし!もちろん良いところもあった。まずオープニングガンバレルからの〜、アバンタイトル長回しからの〜、オープニングクレジット!!の流れは良かった。それからレアセドゥ。とても魅力的な女優だと思う。ムチっとしたエロさに代えてあどけない可憐さを備えたスカーレット・ヨハンソンみたいな笑 個人的にはカジノロワイヤルのエヴァ・グリーンよりも好みだった。