クロスケ

天使のはらわた 赤い淫画のクロスケのレビュー・感想・評価

天使のはらわた 赤い淫画(1981年製作の映画)
3.9
石井隆の主題の一貫性や美意識は、作品毎にメガホンをとる監督が変わっても揺らぎません。もはや映画における「夜」と「雨」は石井隆の専売特許と言ってもよいのではないでしょうか。

夜のジャングルジムのシーンはそれが顕著に現われています。
硬い鉄のパイプに四方を囲まれ、肢体を歪に折り曲げながら、降りしきる雨に打ち付けられる泉じゅんの肉体には倒錯的な美が宿っています。

ひたすら不器用で行き違うばかりの名美と村木の日常は「こたつ」という日本特有の暖房装置を媒介して接続します。
映画の序盤、名美も村木もそれぞれの一人暮らしの部屋で物憂げな気分になると、こたつにもぐり込んで自慰に耽ります。映画の終盤では名美が村木のことを思いながら、こたつの脚をそれに見立てて激しく乱れます。
ヒーターの赤い灯が照明装置として見事な演出を画面に与えていますが、村木の妄想の中で淫らに絡み合う二人は、ひょっとすると、名美の見た妄想でもあるのでしょうか。

それを思うと、村木の絶命の直前で見せる名美の微笑みがより切なく映ります。
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