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たまこラブストーリーのhoshのレビュー・感想・評価

たまこラブストーリー(2014年製作の映画)
4.3
幼なじみの高3、たま子ともち蔵の恋模様を描く青春映画。前作にあたる『たまこまーけっと』は未見。単体でもokという言葉を信じて。大好きな山田尚子監督作品。

もち蔵の気持ちをたま子がキャッチできるまでの話、ってのを冒頭の糸電話で示してそこから話の軸を80分間一貫しているすごさ。

恋愛感情や揺らぎ、日常の変化っていう抽象的な事物を糸電話、窓、水辺(水に濡れる=恋)、脚、餅、バトン、遠いレンズ、静寂などなど即物的なモチーフで表現してみせる演出が天才。全ての小物に意味があり、余白がある。インディー的な音楽のセンス、使い方も抜群。あまりにもストイックに「映画」をやってる。震える。

「この後英検でしょ?」っていうセリフのリアリティ。制服の着崩し、部屋の散らかり具合。京都駅の揺らぐカメラワークと幼なじみの「高いところに登ってみたい」が呼応する、「世界」との対峙のイメージ。主役から脇役に至るまで真剣に真っ当に学生を描いてくれているのが伝わる。

アニメ的ファンタジーはもちろんあれど、キラキラ実写恋愛映画ブームが続いた2010年代中頃くらいにおいて、学生目線でみても違和感がなく、過度なノスタルジーを押し付けることもせず、フラットに学生生活や高校生の感情を描いていたのは京アニだなと。その中でも山田尚子×吉田玲子のコンビは突出した作り手だと思う。

後の山田尚子作品はここに牛尾憲輔が加わって映像の強度がさらに深化することになるのだけど、感情ではなく環境に寄り添う牛尾憲輔の音楽性が山田尚子の余白を残す作家性にピッタリだったのかなと思う。

前述の通りすばらしいリアリティだけど、締めはフィクションでしかなし得ないベタで直球なやり取りを持ってくるのがニクい。最高の切れ味!何度も見返したい!走れ!
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