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トゥモローランドのksawatariのネタバレレビュー・内容・結末

トゥモローランド(2015年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

主人公が飛ぶ瞬間のわくわく感は流石ディズニーという感じだしウォルトディズニーが作ろうとして作れなかったユートピア(トゥモローランド)が密かに実現していたという設定も良い。ジョージクルーニーとロボット少女のコンビ感も好きだ。
しかし好きなポイントが沢山あるが故に残念な部分が気になる。
そもそもウォルトディズニーが作ろうとしたユートピアは一種の選民思想の上に立脚している。そのユートピアがディストピアへと変貌し、ディズニーの夢見たユートピアの概念そのものにメスが入る……かと思えばそんなことはない。旧体制に主人公達が成り代わってまたトゥモローランドを再建するという。「夢を持っている」人間を集めて。
基準がどうあろうとトゥモローランドサイドが一方的に人々を選別するのであればそれは一種の選民思想なのではないかと思うのだが。更に言えば、トゥモローランドに招かれなかった人間達はどうなるのだろうか。招かれなかった人間達で構成された世界はどうなる? トゥモローランドが人を一定の基準を設けて選別し集住させることでより良い世界を作る、という思想を肯定する限りそれは同時に、枠の外側に「より良い」世界ではない世界=ディストピアが広がることもまた暗黙の内に了解することにはなるまいか。
主人公達は世界を滅亡から救ったが、ユートピアのためにディストピアを作る仕組みを再び稼働させる。さも良いことのように。
ただまあ、これは物語上の欠陥というよりは作り手が半ば意図的に組み込んだ価値観だろう。作り手にとってはこれがより良き世界、ユートピアの姿なのだ。
映画の出来が悪いのでは全くない。ただ、私がそのユートピアに入れない側の人間だったというだけの話だ。結局は。
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