AzumiNagasaki

天才スピヴェットのAzumiNagasakiのレビュー・感想・評価

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
4.5
この世で一番透明なものはなんでしょう。
わたしは「こどもの涙とため息」だと思うのです。
この映画はまさしく透明感に溢れた純粋無垢な作品でした。
ジャン=ピエールジュネの、ちょっとひねくれた演出ですらイノセントで愛おしく感じられるほど。

「泣き方だけが、わからない」というコピーにはやや違和感を覚えましたが(だって劇中で泣いてたもん)、きっとこれは家族の前で素直になれない、どこか斜に構えた主人公T.Sを表しているのかしら、と咀嚼した末、ようやく腹に入りました。(お門違いだったりして!)

モンタナの自然豊かな環境で暮らす、T.S.スピヴェットという名の10歳の天才少年が、自ら開発した装置で科学の権威ある賞を受賞し、スピーチをするために家族に黙ってワシントンへ向かう、というストーリー。

家出同然でワシントンへ向かう背景には、家族とのすれ違いなどが垣間見えるのですが、天才とはいえ子どもは子ども。
繊細だからこその懐疑心が裏目に出てしまうわけですね。
わたしも両親がなかなか淡泊なので、スピヴェットの気持ちがわからなくもなく、とにかく10歳という微妙なお年頃の心情や行動が丁寧に描かれていて引き込まれました。
(こどもがしゃべるときの息遣いとか、細かいですがそういったところもキュンときました)

トレイラーを見る限り、ロードムービー感満載で、かつスピーチで思いもよらぬ真相が明かされる!といった期待値が高まっていましたが、率直に申し上げてトレイラーとは全然違った印象を持ちました。
ロードムービーは確かにそうなのですが、本当に面白くなるのはスピーチの先です。
ので、わたしだけかもしれませんが、トレイラーは一度忘れてご鑑賞されるといいのかなと思います。
ちなみに、2Dで見ましたが全然楽しめます。
3Dは3Dで楽しいと思いますが、ストーリーに集中したいという方は2Dの方がいいのかも。
アメリも好きだけど、今作の方が見終わった後あったかい気持ちになります。

そして!なにより!
主役を演じたカイル・キャトレットくんは確実に将来イケメンになること間違いなしなので、イケメン支持派の女性陣はカイルくんがセレブになったばかりに道を踏み外す、なんてことがないよう注意深く見守りましょう!(拳を強く握りながら)

いつも公開日初日は混むから、と避けているのですが、何年振りかに初日に鑑賞しました。
ほんとうにいい映画だった!ほっこり!たぶん女性は共感してくれるはず、母性をくすぐる映画だから。

最後に。カイルくんに、曽我部恵一の「おとなになんかならないで」を捧げます…!
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