MikiMickle

天才スピヴェットのMikiMickleのレビュー・感想・評価

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
4.3
モンタナの農場で、昔かたぎのカウボーイの父と、昆虫の事しか頭にない昆虫博士の母、有名になりたい姉と暮らすT・S・スピヴェット君、10歳。
彼は天才的な脳を持ちながら、誰にも理解されない日々を送っていた。
一年前に、二卵性双生児の弟を銃の事故で失ってから、家族の心はバラバラに。
そんな中、TS君の研究がスミソニアン博物館のベアード賞を受賞し、スピーチをして欲しいとの知らせ。
彼の、大陸横断の家出が始まる。
自分の居場所を求めて………

とにかく、T・S君がいとおしくてならない。

自分とは全く違う弟。カウボーイの素質を持ち、父に愛される弟。
その弟の死の責任を全て自分で負ってしまう、そして家族の愛を感じる事のできないTSを見ているだけで、始終胸を掴まれ、涙が頬をつたってしまう。

理解されたい、愛されたい。
小さな体に負うには、負担が重いんだ。
誰にも言う事なく、その感情を内に秘めるTS君の表情が素晴らしくて………

TSという名前は、キッチンで死んでいたスパロー(すずめ)からとったもので、それは話のひとつの軸になっているんだけど、
それにまつわるふせんがちりばめられていて、それらが心を打つ。

自分自身と、家族の心暖まる再生物語でした。
涙ボロボロ。
これ書いてるだけで、うるうる…

別に、泣かせようとしてる映画ではない。私は、泣かせようとしている映画がちょっと苦手。これは違う。観ればわかる。

また、ロードムービーでもあるから、TS君の冒険も可愛らしくてちょっとドキドキして。

あと、3Dで見たけれど、まるで動く飛び出す絵本のようだった。
フランス人のジュネ監督の目線で描かれる『アメリカ』というもの。
田舎の自然の美しさ。
その裏で、アメリカ嫌いのジュネ監督の、アメリカへの痛烈な批判も受け取れるブラックユーモアが満載。マスコミ・銃・戦争。そこも面白かったな。

TSの頭の中で繰り広げられる分析にクスクス笑ってしまったりもした。
アートワークも、さすがジュネ監督だけあって、独特の可愛らしさに溢れていた。
センスが良い♪

人間は「窓を伝う水滴のように最短距離」で生きる事は出来ない。
MikiMickle

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