ポムポムうさぎ

インヒアレント・ヴァイスのポムポムうさぎのレビュー・感想・評価

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)
5.0
〈個人的最高映画再考③〉
舗道の敷石の下はビーチ!
本作では最後に引用されていますが、ピンチョンの原作では最初に引用されているこのパリの5月革命の落書きは、60年代と70年代の狭間に生きた人々の心の叫びだと思います。
パラノイアを抱えた社会の大きなうねりに抗い、足下の舗道の下にはビーチがあるのだと、敷石を軍隊に投げつける。
ヒッピーたちの「コミューン」が成立し得なかったように、カウンターカルチャーは、反体制運動でありながら基盤が資本主義社会にあるという構造的矛盾から崩壊の一途を辿ります。
インヒアレント・ヴァイスとは、カウンターカルチャーに内在する欠陥であり、さらには、人間に内在する欠陥であり、アメリカ社会、ひいては資本主義社会に内在する欠陥でもあります。
パラノイアに蝕まれた社会に生きる、自らの愛すらも疑わざるを得ない人々。
それを知覚した理性的な人間こそがヒッピーたちでした。
この映画の主人公であるドックはヒッピーですが、コーイとビッグフットを最後に救済するように、パラノイア、まるで幻覚によって病んでしまったような時代を「シラフ」に戻すヒーローとして描かれます。(straight is hip!!!!笑)
しかし、ドック自身は救済されません。ラストシーン、幻覚の中、シャスタと共に霧がかかった道を車で走っていきます。
非常に内省的な終わり方ですが、この映画のエンディングとしては素晴らしいものだと思います。
僕がカウンターカルチャーやヒッピーに憧憬するのは、それらが究極のヒューマニズムの発露であるように感じるからです。
この世の全ての「インヒアレント・ヴァイス」にラブ&ピースを。
ビーチで波の音を聞きながら!!