H4Y4T0

インヒアレント・ヴァイスのH4Y4T0のレビュー・感想・評価

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)
4.6
なんだこれ…ワケわからんけど面白い!
あれこれ考えれば考えるほどドツボにハマり、迷走的かつ瞑想的な世界観にズルズルと引き込まれ、出口を見失い彷徨い続ける感覚を憶えること必至な件。
鑑賞後二日間レビューが書けないくらいに困惑したが、やがてモヤモヤ感は解消され今ではすっかり本作の虜となってしまった。
自分なりの解釈が正しいのかどうか、未だに理解できない点は多々あるが、それでもどこか病み付きになる「中毒性」があるからこそ一部のマニア(褒め言葉)や評論家に絶賛されるのだろう。

現代作家トマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』を原作に、ポール・トーマス・アンダーソンが緻密に練られた脚本を書き加え映画化。ピンチョンの作品が映画化されるのは本作が初めてとのこと。
ぶっ飛んだ内容と物語の方向感覚を失わせる独特なテンポの“ズレ”が思考回路に混乱を来す。
ここまで「手のひらの上で転がされる」という言葉がしっくりくる作品を映像化できたこと自体賞賛に値するのだが、ピンチョンの”狂ったエネルギー”とPTA監督の“異常なまでの執念”が思わぬ科学反応を生み出す結果に至ったことは確かである。

アメリカ独自の文化に着目した前衛的なストーリーが特徴的。
70年代初頭のロサンゼルスを舞台に、マリファナ中毒のヒッピー探偵ドック(ホアキン・フェニックス)が元恋人シャスタ(キャサリン・ウォーターストン)の依頼を受け、調査を進めていくうちに巨大な陰謀へと巻き込まれてゆく。クライム・サスペンスのような展開を予測していたが、また一味違っていた。
いかんせん主人公が始終ラリパッパ状態なので、発する言葉が真実なのかジョークなのかその時々で判断に悩む。
おまけにやらたと多い登場人物の内、大半が頭のイカれた狂人揃いという始末。名前を覚える前に次から次へと投下され、実力のあるキャスト陣ですら脇役扱いするPTA監督の器量のデカさよ。
この上なく理不尽にも見えるが、一周回って愉快で痛快。また“ズレ”の心地良さが圧倒的なシュールレアリズムに拍車をかける。

とにかく長い割に中略ばかりで説明が少なく、最終的に何を訴えたいのかがわかりにくい映画。仮にネタバレをしたところで合ってるのかどうかすらも怪しい。
「作品を理解する=物語の本質を理解する」という捉え方では恐らく楽しめない。ゆえに好き嫌いがはっきりと分かれそうな作品ではあるが、藪から棒に丸投げするのではなく思い切って頭を空っぽにするぐらいの心構えでラストまで耐え抜くことができれば”なんとなく”物語の真意に近づけるのでは。
H4Y4T0

H4Y4T0