半兵衛

嗚呼!おんなたち 猥歌の半兵衛のレビュー・感想・評価

嗚呼!おんなたち 猥歌(1981年製作の映画)
3.5
「ロックンロールたるもの…」という精神を歌より生きざまで体現してきた内田裕也に軟体的な演出家神代辰巳監督が加わることで、堕落していくロッカーのどうしようもない生きざまがねちょねちょした感触とリアルな肌触りをともなってもたらされる二人の個性だからなし得た唯一無二の映画へ。

確かリリー・フランキーが語っていたと思うのだが80年代には確実に「内田裕也映画」というジャンルが存在して、役に馴染まず内田裕也そのままで演技してロックンロールの生態を監督の範疇を飛び越えて生々しく表現し映画ファンの心に刻み込んだ。この映画もその一つで、他の役者だったらシナリオや監督の意図を読み込んでシーンごとに感情の表現をするが内田裕也はそんなことをしないのでひたすら抑揚のない不気味な存在に。でもそれがショーケンやジュリー、ジョンとヨーコのように成功者になれなかった人間のドラマになんともいえない悲哀のニュアンスをもたらしている。

でも何をするかわからない内田裕也よりも、疲弊した表情から突然裕也に物をぶつける絵沢萠子のほうが怖かったりして。

脚本を書いた荒井晴彦が蛇足と語ったラストも、堕ちきった人間の淡々とした心情がにじみ出ていて悪くない。

中村れい子と角ゆり子のダブルヒロインも魅力的で、ポルノとしての興奮度を高める。でも神代監督の女性像らしく付き合うには面倒臭そう。
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