Ritz

リトル・フォレスト 夏・秋のRitzのレビュー・感想・評価

3.8
自然に根づいて自然に生きてく。
ナチュラルに生きるとはこんな感じだろうかと、鑑賞したあと少しうらやましくなった。

道には隙間なくアスファルトが敷かれ、空を眺めようとすればビルの森がそれを拒む。道行く人々はすれ違うその人の顔を知らない。半径200メートル以内にはコンビニ、食べる物には困らない、24時間眠ることのない町。
四季のある国だけど、その移り変わりはテレビが告げる。明日から冷え込むという天気予報は紅葉した木々を映す。それを見て今が「秋」だと実感する。

自然と人との間にあるものが多すぎて、感覚がだんだんと麻痺する。そんな生活を送っているからか、この映画が描くストーリーにみずみずしさを感じた。

自給自足に近い生活と食卓に並べられた季節感満載の手作り料理。小さな農村だけど、そこに住んでる人たちがみんな協力し合って生活している。
素朴な生活って美しいな…(しみじみ)と浸っていたら、

「他人に殺させておいて、その殺し方に文句つけるような奴になりたくない」

と、劇中の一言に我にかえる。

スーパーで売ってる肉とか野菜とか、形や色の良いもの選んで無意識に選別してるけど、でもそれってどうなんだろう?これ形が悪いから買わないって文句つけてるようなもんじゃないか?と不安になる。

自分が食べるものは自分で育てて料理する。でもそれも命を持っている。
森の景色は四季折々に変化する。夏には夏の、秋には秋の植物が咲き乱れ実をつける。それを人間や動物がいただく。
ずっと続いてきた連鎖。歯止めがかかった時代に生きる私。
シンプルだけど大切なことが伝わってくる作品。
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