オーウェン

エアポート’77/バミューダからの脱出のオーウェンのレビュー・感想・評価

3.7
この映画「エアポート'77 バミューダからの脱出」は、「大空港」「エアポート'75」に続く、航空パニック・シリーズの第3弾となる作品。

今回はジャンポ・ジェット機が遭難して、何と海の底に沈んでしまうのです。
しかも、その場所が、あの多くの謎に包まれたバーミューダ・トライアングル。

レーダーにもキャッチされず、無線も届かない。
さあ、乗客はどうなるのか? ----というハラハラ、ときどきする展開となっていきます。

この乗客が様々な人生を背負っているという面白さが、このシリーズの見どころなのですが、しかも、それを豪華なオールスターで描いているところがワクワクさせられるのです。

今回は機長がハリウッド映画界きっての名優ジャック・レモン。
彼はコメディ演技からシリアスな演技まで幅広い芸域を持つ、希代の演技派俳優ですね。

ジャンボ機の持ち主が「グレン・ミラー物語」「裏窓」のジェームズ・スチュアート。
乗客が「風と共に去りぬ」のオリヴィア・デ・ハヴィランド、「第三の男」のジョセフ・コットン---と、懐かしの俳優が顔を揃えていて、嬉しくなります。

そして、ドラキュラ役者として一世を風靡したクリストファー・リー。
この人は科学者役。彼は実際、大学で教鞭もとっており、大変なインテリ俳優なのです。
その彼を理解出来ずに酒びたりの奥さんが「シャンプー」のリー・グラント、機長を愛するスチュワーデスに「ロングウェイ・ホーム」のブレンダ・ヴァッカロ。

そして、この人が出てくると、必ずジャンボ機は助かるというシリーズのスター、ジョージ・ケネディが、お馴染みのパトローニ役で登場している。

また、乗客の衣装も豪華絢爛で、「ローマの休日」などでアカデミー賞をたくさん受賞しているイデス・ヘッド女史のデザインによる衣装で、もう目を奪われてしまいます。

この作品は、アメリカ海軍や沿岸警備隊の全面協力で、スケールの大きな撮影が可能となったわけですが、その一方で、"人間の指"という小さな部分でも、実に細かい印象的な演出がなされていたと思う。

皆を助けるために、進んで海の中へ入っていった科学者が、一瞬の事故から命を落とし、海上に浮かび上がっていき、それを見て、初めて夫への愛を理解する妻のリー・グラントの指には、大きな指輪がはめられていたのですが、あれは、彼女のそれまでの虚飾に満ちた生活が描き込まれていたのだと思うのです。

そしてまた、助かった時、オリヴィア・デ・ハヴィランドとジョセフ・コットンが、しっかりと指と指を絡ませるシーンには、まさに生きている実感が込められていたのではないかと思う。

この大きなスペクタクル・ドラマの中で、小さな指が人間の心を語るなんて、ジェリー・ジェームソン監督はなかなか憎い演出をしてくれます。

そして、一度は助けられながら、また救助に引き返した機長の勇気。
機長だから当たり前と言えばそれまでなのですが、スチュワーデスが震えていた時、彼は言うのです。
「僕も怖い。しかし、我々が助けなければ駄目なんだ」と。
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