ジュン68

ニンフォマニアック Vol.1のジュン68のレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
3.0
「Filmarksで今注目の映画」とのことで、観ました。

 ちなみに、当方これがトリアー監督作品、初めての鑑賞で、そういう意味でも、wktkで劇場へ。以下、感想です。

 まだ、Vol.2を観ていないので、この作品全体を通じて制作者は何を伝えようとしているのか?がはっきり見えてきませんが、少なくとも
「愛のないセックスをしていると、身を滅ぼすので辞めましょう」
ということを言いたいわけでは、もちろんなさそうで、それよりも、どっちかというと(極端にいえば)、
「ある女がおりまして、愛のないセックスばかりしてきて身を落とした話をするので、その哀れさを嗤おう」
という趣旨と捉えたほうが近いのではないかと。
 映画の初めのほうから、すでに、そういうエンタメとして観る心構えが自分の中で出来上がったので、たとえば少女時代の不埒なシーンのが流れつつ、それらを、女が自慢げに語るくだりはマルキドサドの「悪徳の栄え」のジュリエットの語りっぽい気がしたし、父の死という最も厳粛になるべきところで「濡れてた」と告白したところは、バタイユの「眼球譚」を思わせたりして、味わい深かった。
 それに輪をかけて、女の話を聞いた紳士がインテリぶった回答をし、ときおり数式や釣り針が映像にかぶってくるという表現は、女のゆきずりのセックスに漂う「愛のない(そしてやや滑稽な)感じ」に拍車をかける効果があったように思う。
 しかし疑問もありまして。映画のキャッチコピーにもなっている
「愛とは、嫉妬交じりの強い性欲に過ぎない。」
というのは、愛に恵まれなかった主人公が、プライドを保つための強がりというものだろうけれども、Vol.1を通じて、女がこのような考えを持つに至った経緯や、原因となることを暗示させるようなものが描かれていなかった。(あったのかな?少なくとも、私は思い出せません。)ヒントとして「母親が嫌いだった」というのは語られていたけれども、主人公のセクシャリティが歪んだ、決定的かつ根本的な原因となる出来事が不明のまま進んでいくというモヤモヤ感はありました。(-1.0ポイントは、このモヤモヤ感です。)
 とはいえ、そういう、トラウマ的な因果関係が解明されたのちに、ついに主人公が愛に目覚め、ささやかな幸せをみつけて第二の人生を踏み出しましたメデタシメデタシ的な、心温まるヒューマンドラマにはならなさそうな予感があるという意味において、Vol.2に大いに期待が持てます。
(逆にそういう話だったら「バカヤロー、金返せ」と思うかもしれない。)

勢いにまかせて、Vol.1、2のセット券を購入してしまったので、2も必ず観にいきます。

@ヒューマントラストシネマ有楽町にて