たけー

奪還者のたけーのネタバレレビュー・内容・結末

奪還者(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

すごい良かったです。

「世界経済の破綻から10年」って一言で世界観説明されて唐突に始まるのほんとビックリしますが、この映画全編全然この世界の情報が無いし、メインの二人の背景も必要最低限しか(というか「必要」も満たしていないかもしれないくらいしか)語られていないので、本当にこの二人のこの時間に起こったことや交わされた会話しか無い。
だからこの二人の動向をずっと見守っているのですが、途中からなんかすごく良い感じの凸凹二人組に見えてきて、もうこのまま二人でなんとかしてどこまでも行けよ、と思えてしまいます。
最後の家でのシーンの手前、主人公が念願の車に乗りますが(ここ、そのままレイを置き去りで車で去らないんだな、というところがなんというか、犬に優しいな、というか…。レイはやっぱりちょっとこう、捨てられた子犬みたいな雰囲気があるので、主人公もちょっと絆されたのかなあと思いました。)、そこで車から降りず、もうレイを引っ張って車に乗せて二人で去れば良いのにと思いました。でもレイにはレイの筋の通し方があるってもんなので、やはり主人公はそのまま見捨てるか、一緒に家に入るかのどちらかしかなかったのでしょうか。
二人の表情が良すぎて、全然知らん人達なのにいつの間にかここまで二人の関係性にほっこりした気持ちを持ってしまってすみません、人生そう甘くはないですね、といったところです。

ロバート・パティンソン選手のこのレイさんの演技すごい、すごくすごいです。「お前は兄貴に捨てられたんだよ」と主人公から聞かされたときの表情、仕草、ショックの受け方(「頭を過ったけど見ないふりをしていた事実を正しく認識してしまった」という方が正しいというか)、その後のベッドで丸くなってシクシクしてる頼りなさとか、ペットボトルを両手で抱えるあどけなさとか、胸が痛みました。その後の銃撃戦もほんと悲しいつらい。
で、その後割と早めに殺しに順応する感じとか(なんか急に手際が良くて驚く)、「兄貴殺す~!」って思うところとか、主人公と接していくことでまあまあ少し微妙にちょっと良くない方向に成長(?)を見せていて、無常な感じがしました。(それとも兄貴たちといたときからそんな感じだったのか?でもヘンリーは主人公に「弟に何したんだ」って言ってたわけだからなあ…。少なくとも兄に銃を向けるようなことは絶対にしない弟だったのは確かで、主人公が「兄貴に見殺しにされたんだぞ」「戦え」って言った影響は大いにありますね。)あと普通にめっちゃ金持ってたのも気になります。どういう人生?もっと主人公と語り合ってお互いを知ってほしいのでやっぱりラストシーンで車に乗って去ってください。

全然説明のない荒廃した世界で繰り広げられる、世界にとっては取るに足らない二人の人間の一時の交流、刹那的な感情、すごく良かったです。
たけー

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