わち

薄氷の殺人のわちのレビュー・感想・評価

薄氷の殺人(2014年製作の映画)
4.0
ベルリンでグランプリ・主演男優賞の2冠を獲得した、心身ともに傷を追った元刑事と殺人事件に関わりを持つ美女を描いた中国のノワール。
シーン毎にラストがバッサリと切られていたり、経過が大胆に省略されていたりと、説明が削ぎ落とされているため話を追うのが少々大変だが、観終わって振り返ってみるとサスペンスとしてはそこまで目新しい話ではない。
ただそれでもこの映画が素晴らしいのは映像・演出の部分で、トンネルを抜けたら5年が経過する演出、満員のバスの中で人混みをすり抜けていくスケート靴、2人の顔を照らすネオンの明かり…ライトが艶かしく使われる男が女に翻弄されていく部分も、バイオレンス描写はそれほど多くないのにヒリヒリした恐ろしさを感じるサスペンス部分も、それぞれが演出によってとても魅力的なものになっていた。
そんな暗いトーンの内容でありながら、美容院での逮捕シーンや自暴自棄なダンスシーンなど妙に笑えるシーンも何度か挟まれ、先述のバッサリ切った編集も相まってテンポ良く見せてくれるおかげかこういった映画にありがちな退屈さもほとんどなく、総じて満足度の高い映画だった。
ネオンの使い方や台詞・説明の少なさなど何となく共通点を感じさせるニコラス・ウィンディング・レフン監督が好きな人は気に入るのでは。

それにしても、薄幸そうな美女を演じたグイ・ルンメイ(雰囲気が満島ひかりっぽくないですか?)のもはや意識的か無意識的かわからない妖艶さよ!そりゃあ僕だってふらーっとスケートリンクの外についていっちゃいますよ。
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