COZY922

ゼロの未来のCOZY922のレビュー・感想・評価

ゼロの未来(2013年製作の映画)
3.3
常に監視され全体システムの中の歯車として働く様。自分のことを話すのにいつも「我々」と言い、潜在意識の中で個人や個性が際立つことを恐れ避けているかのような主人公。ネットの繋がりによるネットでの疑似恋愛。誰かが生きる目的を教えてくれるのを待ち続けるうちに人生の大事な時間を消費する。。。

SFでありながら、そこに描かれているものは、国民総背番号制による”監視”とかネットのバーチャルコミュニティとか匿名文化などを彷彿とさせる。ありとあらゆることが現代社会の風刺であり強烈な皮肉 または 警告のようだった。

アイデンティティとか人生の意味とか生き方とか 深遠なテーマを匂わせている一方で、ビジュアル, 特に街並みや道具がポップで極彩色で毒々しく、これがテーマのシリアス度を中和しているため テーマの割りに摩訶不思議でどことなくコメディの空気を感じる とてもとても独特な世界観だ。

自己実現さえもバーチャルに依存し、生きることの意味が他の誰かから与えられるのを待つ人生。現実と向き合い傷付くのが怖いのか、思いのままになる虚構の世界の方が楽だからなのか、現実を拒む主人公の選択。彼はあれで幸福なのだろうか・・? とても切なくて残酷なラスト。

逃げずに現実と向き合うこと。
真逆なようだけど、” 頭デッカチにいろいろこねくり回して考えるよりも 時には本能や自分の感情の赴くままに行動すればいいんじゃないの? 考え込んでいる間にも時は過ぎ去るのだから。” そんなふうなことを思ったりした。

そして書いているうちに思った。なんだか主人公の拗らせ具合が、良くも悪くもこの映画そのもののようだ。。
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