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6才のボクが、大人になるまで。のJのレビュー・感想・評価

4.0
・物語★★★
・配役★★★★
・演出★★★★★
・映像★★★
・音楽★★★★★

数々の作品賞に輝いた本作。
人はなぜ、この映画に強く心惹かれ、いたく感情を揺さぶられるのか…。

その答えは、フィクションの中に溶け込んだ異例のリアルさにあるのだろう。
劇中の“ボク(=メイソン)”のファミリーは、あたかも親戚か、あるいは仲の良いクラスメイトの家族であるかのようだ。

同じキャストが12年間を演じ続けるという演出がもたらした最大の功績は、観客をしてこのような錯覚に陥らせ、極めて自然かつ当然に、メイソンらの生活の中へと導いたことだろう。

日本で言えば、さながら「北の国から」といったところか…。
いや、違う!
本作は、数年越し定期的に公開される“シリーズもの”として彼らの成長を描いているのではない。
いまがいつの時点なのか、特定の年数が明示されることもない。

165分という尺の中で、目まぐるしく変わる彼らの髪型や身長・体型、顔に刻まれていくシワなど…
それによって“時間”と“人生”をリアルに描写することにこそ、単なるファミリー映画にとどまらない本作の奥深さがあるように思う。

(※以下、ラストシーンについての言及アリ)

子の巣立ちに直面した母親の心情を見事に表現したP・アークエットのセリフは、かつて自分の母親も同じようなことを言っていたような気がして、懐かしくもあり切なくもあり、とても印象的だった。

“私の人生で最悪の日
覚悟してたけど あなた 浮かれすぎよ
あっけない人生だわ
事件と言えば 結婚して 出産して 離婚した
発達の遅れを心配して
自転車の乗り方を教えて
そして また離婚
修士号を取り 念願の職に就き
サマンサとあなたを大学へ出す
次は何があるの?
私の葬式だけよ”

懸命に駆け抜けてきた時間も、振り返れば、ひとつひとつが至極簡単な一言で表される物事の積み重ねに過ぎないのかも知れない…。

だがそれでも、その時間の積み重ねは、間違いなく次の世代に引き継がれる。
“あっけない人生”なんかじゃない。
ラストでそれを証明してくれるメイソンのセリフも素晴らしい。

“時間は途切れない
一瞬というのは
常に 今ある時間のことだ”


COLDPLAY、LADY GAGA、
FOO FIGHTERS、BOB DYLAN、ARCADE FIRE…
名のあるアーティストたちの楽曲に彩られた、リアルで愛おしい名作だ。
(E・ホーク、「ブルーに生まれついて」の前に本作でも歌ってるじゃん!)

数年後に鑑賞するときは、自分もさらに歳をとり、いまよりもいくらか円熟した感想を持つことができるような気がする。
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