ヘアバンド侍

いま、輝くときにのヘアバンド侍のレビュー・感想・評価

いま、輝くときに(2013年製作の映画)
3.8
ベタでありがちな高校生の恋愛話に見せかけた良作。【以下完全主観の考察】
映画って何らかをテーマにした誇張の極みだと思うけど、この映画もまさに将来への葛藤や何処からともなくくる終わりない承認欲求、初めての恋人への恥ずかしくなる程のウブさ等、鋭く表現されていたと思う。

今が楽しければ良い。将来なんてよく分からない。

今を生きるサッター。人気者系女子と別れて、真逆のオタク系控えめ女子エイミーといい仲になっていく。
正直登場人物のプロットはどシンプルでありがちだと思う。ただ脚本賞も頷ける程、それぞれの、特にサッターとエイミー、描写が鋭く深い。

サッターの元カノ引きずりながら、エイミーと深くなっていく感じはリアルだった。結局最後まで元カノが振り向くのであれば、戻りたいぐらいのスタンス。案外簡単に振り切れるもんじゃないんよね。

正直サッターに関するメインラインの父親や将来への葛藤、元カノへの気持ちの整理の部分よりもエイミーのラストカットで一気に星が0.2くらい上がった。

あの表情で何か自分の中で繋がった。
あ、そういえばこれエイミーの物語でもあったんだ。
サッターの自分探しの物語とエイミーが大人の階段を上る物語。これらが合わさってこの映画になっていると確信。

エイミーにとって初めての彼氏がサッター。やっぱり初めての恋人って何か特別なんだよなと思う。
大切にし過ぎたり、相対評価がないから絶対評価で過度に愛し過ぎる事もある。
その虎の子を守るかの如し、依存的な部分を散々劇中に振りまいておいてからのラストカットだったため余計に良かった。

あの表情は、単に『今更来たって遅い』という表現で留めるには余りに深過ぎる。
初めての、いわゆる未知の、初恋人だったサッターとの一夏を終えて、大人になったエイミーの複雑な思いを凝縮したシーン。

あのバスに乗る前と後のエイミーではもう全く違う。青春時代やヴァージニティの喪失が如何に大切なものかっていう事を暗に誇張している様に感じてならなかった。サッターの脇で張り巡らされていたエイミーの伏線とでも言う所かな。
あのワンカットでここまで考えを巡らせてしまった。凄い映画だね。