百合

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密の百合のレビュー・感想・評価

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stay wired.
ベネディクト・カンバーバッチ怪演!エキセントリックな人物を演じるのがどうしてこんなに上手なのだろう。本当に素晴らしい俳優。
それにしてもストーリーは重い…ひたすら重い…しかし適度にコメディタッチのシーンが挟まれていて中だるみはない。チューリングが暗号解読の鍵を見つけたパブでのシーンが一番好きだった。足を蹴られて戸惑う天才数学者…「あれは口説いてるって言うのよ」と教えられる天才数学者…
時系列がいじられていて戸惑うこともあるが慣れればそれさえ魅力的。
機械と人間のボーダーとはなんなのか?取調室でチューリングが刑事にイミテーション・ゲームをしかけたところ、刑事に「私にはわからない」と言われるが、この刑事、とてもいい役所だったと思う。わたしにだってわからない。そのあとチューリングが「それでは君は私の助けにはならない」と突き放すところも特筆に値する。いつだってほとんどのマジョリティのわたし達は決断を恐れ、なにもかもを曖昧にしてしまうが、それでは何も救えないのだ。
冷徹な計算をもって連合軍を勝利に導いたチューリングだが、ならば彼は機械と同じではないか。何をもってして人間は人間を人間たらしめるのだろうか…
チューリングは幼い頃愛したひとであるクリストファーの姿を追うように機械の研究を続ける。チューリングが罪に問われ、自殺に追い詰められたのはただ一点、その相手が同性であったというだけの理由でだ。男と女、ジェンダーのボーダーはどこにあるのだろうか?どうしてわたし達は世界を男か女かでしか見られないのだろう。もしチューリングが、その姿を機械の中に復元しようとまで愛した相手が女だったら、彼は職を追われ、自死することにはならなかったはずだ。
(しかし愛した相手を機械の中に復元するという思想自体がマッチョ的ではないか?本作からは飛躍しすぎるが)
わたし達はいつも何も救えないなぁ
百合

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