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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密の753のレビュー・感想・評価

5.0
これ僕大好きでして。
もう満点を付けるしかない。
でも観るのは実はまだ2回目。
やっと2回目を観る気持ちの整理がついた。

コンピュータを作った男の純粋な愛と苦悩に満ちた人生。

解読に成功するシーンには映画としての気持ち良さがあると同時に、人生における呆然とするほどの果てしなさが詰まっている。普通の映画なら最初の盛り上がりがクライマックスで、そこまでの人物描写・人間模様を丹念に描いて終わりだ。でもこの映画はそうじゃない。彼らの成功はそれでも人を殺す。
チューリングはジェーンや仲間たちと心通わせる中で次第に人間らしい感情を得ていく一方、非人道的ともいえる数理に基づく命のパズルを淡々と解き続ける。人間とロボットの狭間で揺らぐ。

そしてこれは銃撃戦を描かない戦争映画。
“人は なぜ暴力を好む?
気分がいいからだ
だが 気分ではなく論理に従うべき時もある“

思い出されるのはザ・コンサルタントにあったセリフ、「お前は異質だ 人は異質を恐れる」。あの映画を見た時と同じ感覚になった。ジョーンがアランにかけた言葉、「あなたが普通じゃないから 世界は こんなにすばらしい」を全ての悩める人たちに送りたい。包容力のある言葉。

それからもう一つ、
パブに行こう!
この映画はパブの重要性がこれでもかと分かる映画でもある。閃きの瞬間、つまり、ユリーカ!の瞬間はいつでも突然であり、思いもよらぬ時に現れる。何かについて考え続けるとき、ラジオが電波を探してチューニングを合わせるように、それだというものを探し当てた瞬間、突然点と点が繋がる。パブで起こるあらゆる出来事はイマジネーションにとって最高の起爆剤。

それからそれから、主演のカンバーバッチの演技が凄まじい。フィクションとは思えないほど、二重三重に癖のあるアランを見事に演じきっている。セリフまわしもさることながら、一挙手一投足、挙動に無駄がない。全てが演技に説得力を加えている。


単なる戦争映画なだけでなく、同時に女性蔑視や、同性愛が厳罰など、ジェンダー差別へも一石を投じるジェンダー映画の側面も併せ持つ。これが史実に基づくというのはあまりにも重い。

彼の生涯が幸福なものであったか、彼自身がどう思っていたか。それを測り知ることはできない。だが、不幸であったと断じるにはあまりにも数奇だ。ジョーンの愛は真に本物であったし、アラン自身もそれを分かっていた。

彼はマシンにクリストファーと名付けた。
クリストファーは何故結核であることを親友である(はずの)アランに言わなかったのか。“普通の人”なら優しさだと思うだろうか。“普通じゃない”アランはそれどう感じたのか。彼の死がなければ、アランの功績の上にあるこの世界はもう少し歪だったことは確かだろう。

“エニグマの解読は戦争の終結を2年以上早め
1400万人以上の命を救ったと歴史家たちは見ている“
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