BMB

ビッグ・アイズのBMBのレビュー・感想・評価

ビッグ・アイズ(2014年製作の映画)
3.5
絵を描く妻と、それを自分の作品と偽って売ることで大儲けする夫の話。

大切な作品を夫に奪われた妻のリベンジっていうのが大まかな構図。50〜60年代くらいの男性上位社会で虐げられた女性が奮起するっていうのがこの映画のテーマだからそこが一番強調されてるんだけど、もう一つ大事なテーマが用意されてて、その二つが上手く噛み合ってないように思った。

劇中でも指摘されてるけど、妻の絵が売れ出したのは夫と出会ってからで、それ以前は同じ絵を描いてたにも関わらず誰からも見向きされなかった。夫は拝金主義の嘘吐きだけど、プロモーションのセンスがあることは事実で絵が売れた要因が一概に妻の才能だけじゃないってことがわかる。「〇〇が買った」とか「〇〇に展示された」みたいな評判が評判を呼んで絵が人気になっていく様子は、物の価値が人それぞれの価値観よりも、たくさんの人の合意に引っ張られて決まることが表現されてる。
物の価値、特に芸術作品の価値がどこにあるのかっていうテーマはすごく大事だと思うんだけど、この映画は最終的に夫が映画的な悪行(逆上してクレイジーな方法で妻と娘に手を上げる)に走ることで単純な正義の妻vs悪の夫の構図に収まって、以降その辺りに触れないまま終わっちゃう。
ノンフィクション映画だし、事実そうなったんなら仕方ないのかもしれないけど、物の価値の問題について触れるならもう少し掘り下げるべきだったんじゃないかと思う。中盤までの見せ方が良かったから本当に残念。

クライマックスの裁判は展開が見えてるのに尺が長いからダレる。夫が見苦しく振る舞うシーンが必要なのかもしれないけど、急にコメディ映画みたいな一人芝居が始まるのは唐突すぎる。

不満はあるけど、主演の二人がめちゃくちゃ魅力的だし、中盤までの展開は良いからかなり楽しめた。
クリストフ・ヴァルツは「ジャンゴ」では超カッコよかったのにこの映画だとひどいクズ野郎だったり、映画によって全然違うキャラなのがすごいなぁと思いました。
BMB

BMB