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劇場版アイカツ!のDolphinPaprikaのレビュー・感想・評価

劇場版アイカツ!(2014年製作の映画)
5.0
本作はTVアニメ「アイカツ!」の劇場版であり、第2シーズンまでの主人公・星宮いちごから第3シーズン主人公・大空あかりへとそのバトン(=クリスタル・マイク)が受け継がれる、TVシリーズを含めた中でも最重要のエピソードとなる作品である。

毎週の放送でアイカツが作品を通して全国の女児に伝えようとしていることのおよそ全てがこれ一本に集約されていると言っていいほどに、この劇場版が取り扱うテーマは強い。
星宮いちごのトップ・アイドルという大きな夢が決して一人の力で成し得るものではなかったということ、そしてその夢は自分一人の達成だけで終わるものではなく、同じ夢を見る次のアイドルへと引き継がれていく/伝播するものだということが本作では描かれている。
そして星宮いちごがアイドルを目指すきっかけとなった憧れの先輩・神崎美月の引退を、星宮いちご自身がそのステージを魅せることで思いとどまらせるという展開は、第1話からシリーズを見ているファンにはどうにも熱すぎる。
90分弱しかない上映時間の中でそれらを丁寧に見せ切った脚本・演出は凄まじいもので(無駄がない脚本の中でTVシリーズの主要キャラをほぼ全員出演させるなんてこともやってのけている)、全くもって穏やかじゃないのである。

物語を通して伝えたい大切なことは登場人物たちにちゃんと自分の言葉として語らせるところは見ている観客にも優しく、それでいて物語としての強度もグッと増しているこの映画の非常に良い点だ。

また細かな点で言えば、物語が夜のライブ・シーンから始まるというTVシリーズではほとんど見られない特殊性は映画的で非常にいいと思った。タイトルまでの運びも見事。絵コンテは気合が入りすぎていて登場キャラクターたちがみな最高レベルに可愛い。
中盤までは星宮いちごの腰巾着としてしか描かれていなかった新主人公の大空あかりが、彼女なりに考え行動し、美月をスタジアムへ連れて行く場面は、特別な彼女ら3人の関係をより確かなものにするとともに、大空あかりの新たなアイカツ!主人公としての表明のようにも受け取められてとても好きだ。

神崎美月から始まったアイカツの一本のラインが星宮いちご、そして大空あかりへと繋がったラスト・シーンは、押し付けがましくなく非常に感動的である。大袈裟ではなく、僕は泣いた。
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