nao

花宵道中のnaoのネタバレレビュー・内容・結末

花宵道中(2014年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

「朝霧姐さんは一生分の花、咲かせたんだよ」
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原作へのリスペクトが感じられ、かつ映画としてのアレンジも加えられた素晴らしい映画。
小説を読んでいて上手く想像できなかった街中や道中の様子をしっかり描いており、かつ他の短編に出てくる登場人物たちも実感を伴って出演していた。
何より安達祐実がすごい。朝霧という人間を完全に魅せていて、もう朝霧だとしか思えない。半次郎役の人も、かける言葉の温度が半次郎のそれとピタリと一致してる。
濡れ場もいやらしくなくて、特に最後の朝霧と半次郎が花宵道中のあとに愛し合うシーン。愛し合ってる人間同士のセックスってこんなに素敵なんやって思った。すごく憧れた。だからこそ、近い未来に訪れる結末が悲しかった。
だけどこの映画がすごいのは、アンハッピーではない結末を描いたところ。原作の朝霧の投身自殺は、半次郎の死と恋の行く末に絶望したからだと思う。でも、映画では、八津との朝顔の会話のなかで咲かないよりは咲く方が幸せだという答を得て、朝霧は自分の人生に本気で誰かを愛し愛される瞬間があったことに満足して死んだ。これは彼女が出した自分なりの人生の答だったんだと思う。このシーンを入れた脚本家に敬意を表する、なんて素敵で愛おしい作品なんだろう。
この二人は違う時代でなら、例えば現代でなら、結婚して幸せな家庭を築くんだろう。だけどそれはもう朝霧と半次郎じゃない。二人は、この時代に生きたからこそ朝霧と半次郎なのであって、違う時代に生まれてきたらこんな二人じゃない。江戸時代、あの境遇で育った二人だからこそ惹かれあってこんな激しい恋をしたんだろうな。それが幸せなことかどうかはわからないけど、こんな瞬間に満足できるなら、誰がなんと言おうと二人は幸せだったんだろう。
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