NatsukoSakai

ラブ&マーシー 終わらないメロディーのNatsukoSakaiのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

今年公開の映画の中では、アベンジャーズの次にと言ってもいいくらいに楽しみにしていたこの作品がついに日本でも公開。もちろん初日に行ってきた。そして開始1分も経過しないうちに涙が出てきてしまって、私はもうダメだ。

主役であるブライアンをポール・ダノとジョン・キューザックが演じていて、二人とも本当に素晴らしいからこそ成り立った映画だなあと感じるのだけど、個人的にはやっぱり特にポール・ダノがいいなーと。最近たまたま久しぶりに「リトル・ミス・サンシャイン」を観たんだけどここでも最高で、既にブライアン・ウィルソンぽかった。繊細すぎて心を病んでしまう感じとか。

他のキャストについても、特にビーチ・ボーイズのメンバーや各ミュージシャンなどが、自分の中にあったイメージ通りのキャスティングがことごとくハマっていたのも嬉しい点であった。私はビーチ・ボーイズのメンバーでは一番カールがお気に入りなんだけど、この映画でもめちゃめちゃ可愛くてそれだけでも大満足だった。そんで、デニスはイケメン風の感じってのもまたぴったりだったし。あと、マイク・ラヴも良かったと思う。他のメンバーよりもだいぶ背が高いのとか、毎回登場するたびに違う帽子被ってるのとか。他のキャストもみんなそうだけど、当時の映像とか写真たくさん見て研究しまくったんだろうなーという気がする。

デニス、カールの出番はそれほど多くはないものの、兄弟三人だけで話すシーンというのがわりと多めなのが嬉しかった。

この作品を見る前は、マイク・ラヴが嫌な感じのキャラクターに描かれていたらヤだなーという懸念はあったんだけど、実際ここでの悪役に相当するのはブライアンの父親とあの精神科医だけなので、マイクは別に、まあいいかなと…。あんまりビーチ・ボーイズ知らない人が見たらブライアンとは仲悪いんだなっていう印象は持ってしまうかもしれないけど。ビーチ・ボーイズのファンであれば決してそんなことはない、ってちゃんと知ってるからいいんだけどね……

精神科医といえば、この役を演じているポール・ジアマッティは本当に毒々しく嫌な感じたっぷりで、絶対に知り合いになりたくない感じが最高だった。

妻のメリンダを演じていたエリザベス・バンクスもとても良かった。この人って、ハンガーゲームでカットニスの世話係みたいな感じの、ちょうキュートな役だった人だよね?今回もまたとてもキュートだし毅然とした強い、素晴らしい女性だった。

映画全体としては、おもに、天才の苦悩的なものに重点がおかれているので、ビーチ・ボーイズ初期のヒット曲連発のあたりは序盤にざっとダイジェスト的に流すのみで、ペット・サウンズ及びスマイルの制作過程に多めの時間が割かれていて、それらの作品が特にお気に入りの私みたいな人にとっては特に嬉しい内容だった。ボックス・セットでリリースされている、ペット・サウンズ・セッションズとスマイル・セッションズ、私は両方とも持っているんだけど、そこで音だけで聞いていたスタジオでのやり取りがそっくりそのまま映像化されているのにはおおいに興奮してしまった。例えば、Wouldn’t It Be Niceのイントロ、ドラムのハル・ブレインにこんな風にやってくれってブライアンが指示してるのがあるけど、それを本当にそのまま映画でもやってるの!ブライアンを演じてるポール・ダノがあのボックス・セットを全て暗記するくらい聴き込んで役作りしたんだろうなあとか考えただけでもキュンキュンする。

レコーディングの場面では、ブライアンが一人でやってるよりもやっぱり、ビーチ・ボーイズのメンバーみんなで一緒に歌っているところがとても良い。ああ、これを見たかったんだよ!って感じ。

題材が題材なので、見ていて辛くなる部分も多い。ブライアンに見える世界、ブライアンにしか聞こえない音というのが映画を見ている観客自身がそれらを見たり聞いたりしているようにリアルに感じられるように作られているので、けっこう精神的に追い込まれる感もあるのだが、最後にはそれらが全て解放されるような終わりかたで、あれもまた、やられたなーって。あの曲をそこで使うか!って。
NatsukoSakai

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