MikiMickle

カニバルのMikiMickleのレビュー・感想・評価

カニバル(2013年製作の映画)
3.6
好みの女性を見つけては殺し、山小屋に運び、キレイに小分けしてラップにくるんだ肉辺を丁寧に自宅冷蔵庫にしまう男。
彼の名前はカルロス。スペインで仕立て屋を営んでいる。
綺麗にスーツを着こなす寡黙なカルロスの裏の顔は、美女の肉を日常的に食すカニバリストだった。

ある日、女性が訪ねてくる。カルロスの部屋の上に住むユーゴスラビア人女性アレクサンドラの双子の姉ニーナだ。連絡の取れなくなった妹の安否を心配してやってきた。
しかし実は、妹はすでに冷蔵庫の肉となっていた。

その事実を知らないまま、カルロスに好意を抱くニーナ。
カルロスもまた、ニーナの事を「愛する」という感情にとらわれていく。

という、異常な純愛映画、かつ、ミステリー映画でした。


セリフは少なく、スローなカメラの動き。
ただ耽美的に、叙情的に、ゆっくりと流れるストーリー。
殺 害シーンも血もグログロも全くありません。

小分けされた肉を丁寧に調理し、黙々と味わうカルロス。
そこには、狂気的な激しさは一切なく、日常の生活の一部である事がうかがえる。
というか、殺 人と人食そのものが、カルロスの性的行為の代償であるのだと思う。

途中で出てくるキリスト関連の映像は、カルロスとキリストを重ねあわせているわけで、自分の血をワインに肉をパンに、というキリストと違って、女の肉をワインで食すカルロスの行為は、色々考えるところがある。

で、ニーナの事は食べるのか
そこがこの映画のポイントのひとつであります。

そして、カルロスという男の、モラルとかではくくれないなにかが欠如した人物の「愛」とはなんなのか。

普通の人は実は怖い。というような単純な一言では言えないような静かな狂気…というか違和感を感じました。

そして、情緒あるグラナダの街並み、壮大な山の自然の映像は、それを忘れさせる美しさ。

役者が良い!基本的に無表情なカルロス役のアントニオ・デラ・トレの微妙な表情♪全然知らなかったけど、彼の出た「気狂いピエ ロの決闘」はすごく面白かった。
アレクサンドラとニーナの2役を演じた女優さんも美人じゃないけど不思議な魅力♪


スペイン ゴヤ賞8部門ノミネート。
MikiMickle

MikiMickle