COZY922

バクマン。のCOZY922のレビュー・感想・評価

バクマン。(2015年製作の映画)
4.1
描き作り上げるという観点での漫画の世界とそこにある人間ドラマを2時間に凝縮し魅せてくれた映画。原作未読で漫画をあまり手にすることのない私でも引き込まれた吸引力!

まず感じたのは見せ方の巧さ。白い紙に線が描かれ、最初はただの線に過ぎないものがペンを走らせるたびに意味を持った集合体となり、やがて文字通り生き物のような躍動感を纏っていく過程の表現方法が素晴らしい。ペンの音、紙の擦れる音など、音が実に効果的に使われている。パラパラ漫画でも見ているかのような画の完成までの見せ方や、漫画を描いたり考えている際の思考や過程のプロジェクションマッピングによる表現、ライバルと競い合う様のバトルによる比喩表現など、静止画であるはずの漫画を動的に見せる斬新な試みがなされ、目が釘付けになる独創性と工夫に満ちていたと思う。

内容は少年ジャンプのspiritである友情・努力・勝利を漫画家を目指す2人の高校生にぴったり重ねたもの。天才ではない2人が、漫画家になり少年ジャンプの連載を勝ち取りトップになるという夢の実現に向けてタッグを組み、ひたすらがむしゃらに突き進む。夢を見ることとそれに向かって努力することの素晴らしさ、好きだからこそ感じる楽しさや高揚感と 好きという気持ちだけではどうにもならない現実の厳しさ苦しさが同時に伝わってきた。

体を壊しているのに病院を抜け出し漫画を描く漫画家を止めようとしない編集者や、サバイバルな世界の厳しさを知り尽くしていて自分自身も連載があって大変なはずの他の漫画家達が2人を手伝うシーンには『いやいや、それ友情じゃないでしょ!』という違和感を正直覚えたけれど、それを差し引いてもおもしろくて疾走感と躍動感とクリエイティブな空気に満ちた映画だった。努力しただけでは夢は叶わないが、努力しないと叶わないのも事実。それを思い起こさせる1本。

エンドロールがまたいい!斬新で最高に漫画愛に溢れていた。
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