80歳を超えても意欲的に映画製作を続ける鉄人クリント・イーストウッド監督作品。早撮りでも有名で、すぐに次の作品作りに取り掛かるのでも有名だ。
しかし、今年で88歳。すでに引退してもおかしくない年齢だが、彼に引退の二文字はないのだろうか。
『ミリオンダラー・ベイビー』『グラン・トリノ』『許されざる者』などラストに後味が悪い映画が多い。そのせいか、本作も後味が悪いのではないか、と警戒してしまう。本作は戦争映画であるため、悲劇的にならざるをえない。
中東のイラク。戦場。ある建物の一角。スコープから見える子供。敵か。一般市民か。逡巡するクリス。にじむ汗。決断。放たれる弾丸。倒れる子供。死。
日常生活の一部のように訪れる死。クリスはPTSDを発症する。戦場で精神を安定させることなどできない。普通の青年が戦場に赴き、正常な精神を歪ませて、本国に帰ってくる。その悲哀をイーストウッドは描いている。