きょむ

ぼくを探しにのきょむのネタバレレビュー・内容・結末

ぼくを探しに(2013年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

フランス映画らしく映像がものすごく可愛くて、でも何となくブラックだったり、割と残酷な描写(中国人差別とか犬のはく製とか)がポップに描かれている。
ジョークにしても「それは言っていいの?」と思うようなことも言っちゃってたりね。
ポールは、叔母姉妹にこれでもかと過保護に育てられているせいで、自分の過去と向き合うことも、将来を考えることも出来ず、孤独なんだけど、マダムプルーストという謎の自家製植物で作った紅茶による記憶療法を生業とする不思議ちゃんマダムと知り合い、自分の過去の記憶や両親の死について徐々に思い出していく。
設定としてはぶっ飛んでるし、これだけ聞いてもあんま面白そうじゃないんだけど、なんでこんなに色彩感覚とか映像の作り方とかが魅力的なんだろう。
小物ひとつ、家具ひとつ取ってもおしゃれ。
良く見なくても、割と全部が古いし、錆びついてたりするし、蛇口とかクーラーとか見る限りどう考えても日本のほうが過ごしやすいだろうなと思うんだけど。
マダムの治療が功を奏したのか、演奏中にイマジナリーフレンドが見えるというやばめの演奏だったもののずっと惜しくも逃し続けていたピアノコンクールで優勝出来て。
そこで綺麗におわるのかと思ったら、そのあと、自分の両親が死んだ原因は上の階から落ちてきた、毎日自分が弾き続けてきたピアノだということを思い出してしまう。
大元は、両親の友人が部屋の壁を取り払って違法な改築したせいで、上階のピアノの重さに耐えきれず落ちてきたんだけど。
でもポールからすると原因はやっぱピアノだもね。自分の目で見たのは。
自らの指を傷つけて、ピアノが弾けなくなってしまったんだけど、それはポールにとっては自分の人生の始まりだったし、亡くなったマダムがよく弾いていたウクレレ教室を開いたり、結婚して子供が出来たり。
不思議くんなもんだから忘れてたけど、主人公は失語状態だから台詞無いんだよね。
ずっと表情だけで、喜怒哀楽があんなにくるくる分かりやすいの面白いな。
ラストで自分の娘に向かって「パパだよ」って話かけるのが最初で最後の台詞。
面白いお話しではないんだけど、雰囲気とか登場人物たちの憎めなさとかが、すごく良かったな。
きょむ

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