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刺さった男のYSKのレビュー・感想・評価

刺さった男(2011年製作の映画)
4.3
面白かった!

はじめこそブラックコメディ的なものかと思いましたが、意外?にもスパイスのきいたピリリと辛い風刺作品でした、もしかしたらきかせすぎたかもしれません

簡単に言えば、誰もが知っているCMのキャッチコピーを生み出したやり手広告マンだったものの、今は失業し求職中だが破産まっしぐらの主人公が、事故で遺跡の高所から落下し、一命はとりとめたものの地面から飛び出た鉄骨に後頭部から刺さってしまった男性を巡るドタバタ劇です
生きているのが不思議なくらいの事故ですが、その周囲は主人公の心配は二の次三の次で金と評判と評価の話しかしません

遺跡を管理する市長は死んで評判が悪くなることしか心配していません
遺跡の館長は救助のために遺跡を破壊するのではとの心配しかしていません
旧知の広告マンから派遣された代理人は取材や撮影、CMなど金の算段しかしていません
主治医は自分がどんな風にテレビに映っているかの心配しかしていません
主人公の求職を断った会社の社長は自分のせいで主人公が自殺しようとしたのではと心配しはじめ急遽採用の手続きを指示、あげくその席を空けるためにひとり解雇します
代理人から連絡をもらったテレビ局の重役は安く買いたたくことしか考えていません
もちろんマスコミはスクープをものにすることしか考えていませんし、大衆だってふってわいた大事件に興味津々、カメラを構える者もいればカメラにピースをむけるものだらけです
そして主人公も、この状況をいかに金に換えるかしか考えません、自分の命に価値ができたことに大喜びで心から彼を心配している妻や家族のことなど顧みていません

そもそものきっかけは彼が立ち入り禁止の場所に入り、声をかけてきた警備員から逃げ出したことにあるため正直同情はできませんが、彼にはとても素晴らしい家族がいました
犯罪的なおっぱいと暴力的なスタイルを持った奥さまのサルマ・ハエックさんはほぼ唯一といっていいほどこの作品の良心で、特に失敗続きを嘆く主人公に言ったセリフは非常に愛に溢れていました

特に最終盤の20分は、ここを見るために色々とフラストレーションをためてきたんだなあと思うばかりでした、コメディではなかったけど大満足でした
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