映画太郎

虐殺器官の映画太郎のレビュー・感想・評価

虐殺器官(2015年製作の映画)
2.0
原作未読

絵面や動きはさすがにいまどきの日本のアニメという感じでクオリティーが高いと思いました。主要キャラが似たようなイケメンばかりなのは個性がない感じでしたが。

兵器や銃火器、未来的な装備も面白いのですが驚くようなものではありませんが、そこはリアリティを追求した結果なのかなと。人工筋肉の用途は面白かったですね。

さて、終始一番気になったのは"会話"です。原作に忠実にしているからなのか、それこそがこの作品のアイデンティティなのかは、私にはわからないのですが、とにかく言葉が難しい。会話の内容がわからないというわけではなく、人と人の会話で小難しく硬い言葉ばかりの会話をするだろうか? 文字やマンガだと意外と気にならないのかもしれませんが、そういう部分に凄く違和感を感じました。或いは私が低脳なので理解できないという可能性はありますが(笑)。

会話の内容とは別に、とにかく主要キャラがよく喋る。時と場所を問わずによく喋ります。しかも話が長い。

本作に限らず日本の実写、アニメ、ドラマの類は本当によく喋ると思います。1人でも喋ります。理由は単純で作り手は楽だし、受け手はわかりやすいからです。よく考えてみるとかなり非現実的だと思いますが、皆さんはどのぐらい独り言を喋りますか? 少ない言葉と芝居だけで見せて、観客に理解してもらうのは確かに難しいし、演出も芝居も高いレベルを要求されます。そういう意味ではアニメで表現するのが難しいのはある程度しかたのないことなのかもしれません。

と、いうことを差し引いたとしても本作は喋りすぎだと思います。モノローグで物語の背景をすっかり説明するとか、一兵士が対象を締め上げて説教を始めるとか、作戦進行中に対象と議論を始めるとか、とにかく主人公は黙っていることがほぼありません。ハリウッド映画にありそうな戦闘中の仲間との軽いジョークもなんだか取って付けたように感じてしまう。例えば『ゼロ・ダーク・サーティー』の強襲シーンや『アメリカン・スナイパー』など、過酷な訓練を受けた特殊部隊でさえ、作戦進行中は尋常じゃない緊張感が支配していて、簡単なことでパニック状態に堕ちてしまいます。それが現実とどの程度乖離しているかという問題はあるにせよ、少なくとも受け手は緊迫感や恐怖を感じることはできます。

私は、現代の戦争映画の役目は戦争行為自体に恐怖や嫌悪や愚行という印象を観客に植え付けることだと思っています。戦争はカッコいい憧れの対象などにしてはいけない持論があります。

本作のもうひとつの問題点は、戦争の犠牲になっている膨大な人間がリアルに感じられないことです。目の前で撃たれていく人間に対しても何も感じられない(私の問題ですかね?)。見えてくるのは、スタイリッシュな未来の特殊部隊と理知的でクールな悪役? そして!小難しい台詞とややこしく見えるストーリーだけです。

アニメとして映像化するには難しい話だとは思いますが、決してダメではないけれど、もったいないと感じる作品でした。

ところで問題の「虐殺器官」ってそんな重要でした?…



一番お喋りなのは私でしたね(笑)。
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