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百円の恋のyuswayのレビュー・感想・評価

百円の恋(2014年製作の映画)
4.0
実はぎりぎりのところで生き繋いでる人達が街には溢れてる事を突きつけられた。
リアルな人物描写で、一子や関わる人々に自身を投影してしまいがち。特に一子の生々しさは半端ない。安藤サクラ渾身の演技を見せてもらった。引きの映像でさえ既に彼女が何者かが窺い知れるほど。自堕落なニート三昧の姉に対する妹二三子の怒りに最初全面共感してたが、いつしか一子が抱えるやり場のない怒りや諦めや苦しみが自分の人生と重なっていく。100円程度の安い女と自ら自虐する彼女の恋の始まりがあまりにも不器用で可愛らしさしくて堪らない。脚本も監督もおっさんなのに何で乙女心がこんなにつぶさに描けるのだろう。パワハラ上司にもゲス野郎な同僚にも恋するダメ男にも散々な目に遭って初めて立ち上がる姿にめっちゃテンション上がった。身体も動きも目付きもどんどん変わっていく安藤サクラに単なるスキル超えた役者魂を見た。
「勝ちたかった」と絞り出したラストの言葉には負け続けたこれまでの人生を背負った一子の覚悟を感じた。撃たれて撃たれて床に叩きつけられる姿が一子のこれまでの人生と重なる。人生とひとつ違うのは立ち上がるところ。その眩しいリングに立つために、たった一度の勝ちを取るために、どんな場所から這い上がってきたのか知ってる家族一人一人のリングを見つめる眼が目に焼きついている。妹も父親も一子の姿を見て湧き上がるものがあったに違いない。本気のボクシングには人を変える力があるからすごい。(森山未來をジムで見かけた様な気がしたけと、気のせい?)
あと、地味に心撃たれたのが母の愛だったし、新井さんがまんま新井さんであの独特の味は唯一無二だと改めて思った。たっぷりと社会的的制裁を受けてから名前も乗らない様な端役でいつか映画で見つけてみたい。
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