おさら

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のおさらのレビュー・感想・評価

3.5
カメラワークが独特で、全然カットが入りません。そのため、時間経過などが分かりづらくて、少し戸惑いました。
ドラムがすごく良い。
ドラム音に合わせてアルファベット順に文字が現れるのは斬新で好きでした。
作中に流れる音楽は、映画としてのサウンドかと思っていたんですが、映画を見ていると、リーガンの幻聴の一つにも思えてきました。
舞台もすき。小さな劇場。カメラワークの効果ですごく広く感じるけれど、多分そこまで大きくない気がします。都心の地下鉄ダンジョンみたいに入り組んでいて、さながらリーガンの心のよう。あの細い廊下、複数の部屋、あの舞台があってこそのこの映画な気がする。あれが例えば清潔感溢れて広々とした劇場で、どこもかしも部屋を明るくするライトが点いていたなら、ここまで深い映画にはなってなかっただろうと思う。
この作品は、恥を恐れ愛されたくて孤独な年老いた男が年老いてから脱皮するような話でした。
一つ目の脱皮が多分裸で街を走った時
彼の脱いだローブが雨に濡れてドアに挟まったまま映されているシーンがありますが、あのローブがある意味以前の自分=脱皮前の皮だと暗示してるように思えました。
二つ目の脱皮はバードマンがはっきり写ってるところです。バードマンを写したってことは彼がバードマンの言葉(自分の本心?)を受け入れたということだと思います。
三つ目の脱皮は、明確には言えませんが鼻を吹き飛ばしたあたりだと思います。鼻が吹き飛んで再度目がさめるまで、少し風景描写が入りますが、あれが脱皮...というか彼なりの芸術の感性の芽生え又は自覚なのではないかなと思っています。
あと、鼻が吹き飛んだあとの包帯や傷跡がバードマンの仮面を思わせて面白かったです。
サムとマイクが「真実と挑戦」というゲームをしていますが、何となくこれも本作品の暗示のように思えます。思い込みすぎかな?
ずっと真実しか見ようとせず、挑戦のようなことをしながらも恥を恐れて結局中途半端。思い切りのなさが、リーガンらしいですね。マイクはその正反対の性格で、常に舞台に対しては挑戦のような、輝く斬新さを持っているような気がします。だから観客からも人気がある。サムも父とは違うその姿に惹かれた。シルヴィアの「あなたは役者ではなく有名人よ」とか、マイクの「人気なのは映画であって、リーガンじゃないだろ」
途中でマイクがレズリーのことを「独り歩きしはじめた」と言ってます。これは、きっと「わたしにはプライドがないの?!」と言ってる、リーガンのように役者なのに恥に慣れていないレズリーが、プライドを捨て、真の役者..という言い方は変ですが、兎に角リーガンより先に役者というものの在り方に気づいたんだと思います。

リーガンの超能力ですが、結局は彼の妄想だったということをチラチラと映画が進むにつれてバラしていますが、最後まで指をさしたら扉が開いたり、サムが窓の外を見上げたりして、どことなく超能力感を残しているところが面白いなと思いました。
最後のシーン、結局窓の外で何をしていたかわたしは分からなかったのですが、リーガンが窓に腰をかけた時、思わず「めぐりあう時間たち」のヴァージニアと笑い方を重ねてしまって、芸術家らしい死に方をする、と思ってしまいましたが、どうやら生きてるみたいで良かったです。..多分生きてる
リーガン自身の葛藤を描きつつ、所々に映される家族愛がすごく好きでした。愛だ

エマストーンが半端なく美人ですね。歩き方がすごい好きです。サムが「SNSではみんな存在を発信している。パパは無視されるのが怖いのよ」みたいなことを言ってリーガンを否定しつつSNSの良さを伝えて勧めて?いますが、エマはSNSの良さを分かった上でだからこそSNSはやりたくない、という、人物と役者が全然意見が正反対なのに演りきってるのが面白いなぁと思いました。エマ〜...インスタとかやってほしい
おさら

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