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エヴェレスト 神々の山嶺のぴろもーどのレビュー・感想・評価

エヴェレスト 神々の山嶺(2016年製作の映画)
2.0
原作を読んでから、有楽町朝日ホールにて試写会で鑑賞。

この作品、原作がこれ以上ないくらいの出来栄えなので…今作、原作ファンからすれば物足りなさを感じます。
撮影は実際エヴェレストでの危険な撮影だったとお伺いしており、それは確かに困難極まりないことだと思いますが、やはり結論からいうと物足りない。それは撮影がというより、脚本にある気がします。

原作は8年もの時間をかけ完結し、1000頁以上もの大作となった『神々の山嶺』。
そんな大作を2時間2分に纏められる訳がない。これをカバーする為には、脚本と監督、そして役者さん達の腕の見せ所というやつでしょうか。ただ、今作、どうにか纏めようと、極端に重要だろって所が省かれすぎています。
原作では死んでいた長谷が足を負傷してはいるものの映画内では生きていたり…その設定だけを見ればアレンジが加えられているのだと面白いけれど、これ見よがしにその長谷に全部喋らせてしまっては、この作品の羽生という人物が私達鑑賞者の中で『ただ頑固な山に執着した自信家』というイメージしか持てません。こんな男に誰が共感するのか。羽生はこんな男だよな、うん、こいつならこうするだろうな、こいつにしかできない、やってやれ!そんな風にイメージが出来上がっているのが理想的なのでしょうが。折角、キャストの阿部寛さんは羽生役としてはまっているというのに勿体無い。

ちなみに私の中で岡田くんの演じる深町の印象はこれまた原作とは違う。もう少し物腰柔らかいイメージだったものの…今作の深町は終始ふてぶてしい。これまた共感しにくい。
あ、でも岸くんは良かったです。兄貴をただひたすらに慕い、がむしゃらに自分の憧れる羽生に着いていこうとする幼さや危なっかしさが、良く表現されていました。

エヴェレストがどれだけ危険な所なのか、エヴェレストを無酸素単独で登ることの凄さ、羽生はその為にどれ程のエヴェレストについて隅々まで調べ上げ、身体を鍛え上げたか、この作品からは伝わりきらなかった。原作を読む前にこちらを鑑賞し、その後原作を読んだ方がいいかと。