COZY922

きみはいい子のCOZY922のレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
4.0
真面目に取り組んでいるけどクラスをまとめられずに悩む新米教師、幼少期のトラウマから自身の子供を虐待してしまう母親、障害を持つ子と認知症ぎみのおばあちゃんとの交流。中脇初枝さんの短編集の中の3つの話から成る作品です。

まずは描写がとてもリアルだと思った。虐待、ネグレクト、自閉症、いじめ、モンスターペアレント、認知症。本作が描くのはいずれも現代社会が抱え、報道でたびたび見聞きするもので本来リアリティがあるべき話だけど、こういうテーマで実際に映画になったものを見るとどこか不自然で造り物だと感じることが今までは多かった。本作にはそういう造り物臭さが無い。学級崩壊の様子や、ママ友の集い、小学生の便乗テンションなんてあるある感満載だった。あとで知ったけど、某シーンは用意されたセリフではなく、子供達それぞれの実際の感想らしい。どうりでリアルなわけだ。

「そこのみにて光輝く」でも感じたけれど、呉美保監督は日常シーンや世の中で起きていることをフィルターにかけずにそのまま切り出してくるのが実に上手いなあと思う。問題提起に対して過剰で出来過ぎた解を提示するのではなく、原点を見つめさせるアプローチも好き。

フライヤーに使われている2つのシーンのようにハグすることで安心感が得られたり気持ちを共有できた感じがしたとか、あるいは、ハグでなくとも誰かに話しただけで気が楽になったという経験は多くの人が持っているのではないだろうか。

劇的なことは起きず、何かを促すのでもなく、ただ寄り添うことで次に進める道が少し見えてくる、そんな映画。
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