スギケン

マイ・インターンのスギケンのレビュー・感想・評価

マイ・インターン(2015年製作の映画)
4.0
『プラダを着た悪魔』が20代女子の憧れを集めた映画だとしたら、本作は30代キャリアウーマンの憧れを結晶化したような映画。
主人公ジュールス(アン・ハサウェイ)は、自ら起ち上げたアパレル通販会社を2年で従業員20人から200人規模にまで拡大させたやり手社長。可愛い娘と専業主夫の夫に支えられ、何もかもが順風満帆に見える。
一方、もう一人の主人公ベン(ロバートデニーロ)は、定年退職し、妻に先立たれたやもめ男。太極拳をしたり、中国語を習ったり(この辺ハリウッドでも中国の存在がいかに大きくなってるか表れてて面白い)、旅行をしたり、悠々自適の隠居暮らしをつかの間楽しんだものの、起伏のない生活に物足りなさを感じていた。そんなベンがある日、ジュールスの会社のインターン募集広告を見て…というのが物語の始まり。

宣伝でも大きく打ち出されていたように、一見『プラダ…』の続編かと思うくらい、似通った要素もある。
どちらも職場はファッション関係だし、働く女性が仕事と家庭に引き裂かれ悩む姿が映し出される。
しかし、両作が提示する物語の結論は真逆だ。
『プラダ…』では最終的に主人公は会社を辞め家庭を選ぶ。「働く女性たちの職場」はあくまで特殊な世界として描かれ、主人公はその世界から抜け出すことで日常に帰還し、愛と平安を手に入れました…という終わり方だった。
『プラダ…』の公開は2006年だったけど、正直に言って、このラストには白けたことをよく覚えている。どう見ても主人公は働いている時のほうが輝いていたし、ラストで主人公がイケてない彼氏に合わせて、お洒落な服を脱ぎ捨てダサい服に着替えて現れるシーンなんて悪い冗談としか思えなかった。

『マイインターン』では『プラダ…』よりはるかに重い決断を主人公は迫られ、仕事と家族の間で揺れるが、最終的にジュールスは仕事を捨てず夢を追いかけ、一旦崩壊しかけた家族もそんな彼女に理解を示し再生する。
『プラダ…』から約10年の時を経て、ハリウッドは「仕事か家族か」の二択ではなく、「仕事も家族も」追い求める女性の姿を描けるようになった。
まだまだ残る企業社会での女性への差別、夫の浮気、ママ友からのやっかみ、ジュールスは様々な壁に直面するが、そんな彼女を支えるのが、70歳のベンだというのが印象的。ベンは自分の子どもほどの歳の若い同僚と上司を圧倒的な包容力で包んでいく。
ダンディさ、優しさ、包容力に溢れるベンは、男としては「こんなふうに歳をとりたい」という理想の姿であると同時に、今の男に足りないものを突きつけられている気がしてドキッとする。

「現実はこんなふうに都合よくいかない」と思う人もいるかもしれない。しかし、物語の想像力は、ありうべき理想、未来の現実を先取りする。この作品をファンタジーで終わらせてはいけないと思う。