花波

レヴェナント:蘇えりし者の花波のレビュー・感想・評価

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
3.8

敵わない。なんていうかもう、光にも、息遣いにも、怒涛の勢いにも、圧倒されて。敵わないって、そう思った。生きる彼らというか、動物たち、木々たち、息づいている地球のそのすべてに。


決して復讐劇の一言では済ますことが出来ない映画で、でも、何を感じ取る映画なのかをはっきりと言葉にすることも出来ない。なんと言えばいいのだろう。グラスの復讐はそれを観せるためのきっかけにしか過ぎないような気がするんだ。それ、というのは、生きること。とか。息をし続けること、この世界に生まれたこと、生かされていること、多種多様な生き物と共存すること、その中で今まで繋がれてきた命。そういうものがこの映画に溢れてた。そんな気がする。


これは本当にわたしの個人的な意見だけれど、タルコフスキーの映画を観たような気持ちになったんだ。ストーリーの分かりやすさは勿論こちらの方が分かりやすいんだけれど、でも、最後まで観て、息遣いの中で流れ始めるエンドロールを眺めながら、なぜか頭の中にあのタルコフスキーの、彩度の低い映像の数々が蘇って、世界とか、人間とか生物、みたいな、そういう大きなものを感じて、もしかしたら、本当にもしかしたらだけど、訴えていることは同じなんじゃないかって、そんな気持ちになった。

タルコフスキーの映画を観ると、いつも思い出す。命が繋がっていること。人類が勝手に決めた領土のこと。本当は誰のものでもないはずの土、水、光、火。一人の人間が生まれおちるまで、果てしない昔から犠牲になってきたたくさんの命のこと。次へ繋いでいく雌という生き物。そして神のこと。

タルコフスキーからイニャリトゥへと、繋がってきたもの。



こんなことを分かったように書いて、でもまだなんにも解ってない。一度観ただけではすべてを自分の中に落とし込むのは難しい。皆様の言うように、ひたすらに凄い映像の連続だったし、音のひとつひとつも素晴らしかったし、主演男優賞のレオの演技も凄いと言わざるを得ないものだった。ただ、そこだけを観るのは違う気もした。また挑戦したい。

それで、自分の中で噛み砕けたら、誰かと語り合いたいような、そんな映画。演技のこととか撮影方法のこととかじゃなくて、ひとつひとつのシーンの意味とか、そういうものについて。パンフやら監督のインタビューやらは、読まない段階で。


【追記】
shinobuさんに教えていただき、どうやら本当にタルコフスキー作品を参考にしていたようです。ますますこの映画を何度か反芻して嚙み砕き、飲み込みたいと思いました。公開が終わる前にもう一度劇場行きます。
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