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彼方からの手紙のimpreのネタバレレビュー・内容・結末

彼方からの手紙(2008年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

驚くほど乗れなかった。映画的なリズムとポップさを重視するあまり、人間としての倫理を蔑ろにしてると思った。
主人公は自他ともに認めるダメ男なんだけど、すごく恵まれた状況にいるので、まずそのダメさを愛せないんだが、この映画に出てくる人たちもこの映画の作り手も、主人公を愛してしまっていて、そこがズレている。彼は夫として父親として、また人として責任(=応答能力)を取らないといけない立場であるにも拘らず、責任を取らない男だということを映画全体で問題にしていないのが大きな問題だと思った。
具体的に言うと、彼はあの「部屋」で、逃避行を共にした少女が自分の実の娘だと分かったとき、早く家に帰って恋人に対して何かしらのアクションを起こさないといけないところを、踊って暴れる以外に何もしないのだけど、その無責任さを作り手は少しも克服すべき問題だと捉えていない。
あと恋人に電話で妊娠したことを告げられた(彼女も彼に対して甘すぎると思うけど)とき、無言で電話を切るのは本当に人間として良くなくて腹が立った。それですぐに家に帰ればいいものの、作り手は家に帰るまでに色んな時間のシーンを挿入していて、作り手が本当に家に帰りたくないんだなと思ってダメだった。
一言で言えば子供の無責任さで作られている。『ジオラマボーイパノラマガール』が、まさに他者への無責任さから責任を受容する映画として傑作だっただけに、かなり失望した。
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