森泉涼一

くちびるに歌をの森泉涼一のレビュー・感想・評価

くちびるに歌を(2015年製作の映画)
3.3
数多くの青春映画を手掛けてきた三木孝浩監督だが、今作では子供たちが学生生活の中で情熱や努力を一つのものに注ぎ込んだ青春映画となっている。 今作で学生たちが注ぎ込んでいるのは「合唱」。誰もが経験したことがあるだけに劇中で純粋に喜怒哀楽を示している学生たちに自然と引き込まれていく。この純粋さはどこからくるのか。長崎県の小さな島という田舎らしい素朴さと感性豊かな表現、そして努力の賜物といっていい方言。これら全てを兼ね備えた学生役を演じた役者陣の存在あってこその映画だと言える。演技経験があまりない役者陣だが初心な役者が力を合わせ一つのものをつくりあげる様は劇中での合唱部の結束力にも通ずるものがあり納得させられる面もある。 主演の臨時教員を演じた新垣結衣。青春映画でこのような冷淡な役を彼女が演じることはある意味貴重なのかもしれない。学生たちの爽やかな笑顔とは反面、無表情で陰気。合唱部の練習室で最初に発した言葉「適当によろしく」はインパクト絶大だがこれを純粋さで売り出してきた新垣結衣が発するのであればこれも倍増である。
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