三上マナ

隠し剣 鬼の爪の三上マナのレビュー・感想・評価

隠し剣 鬼の爪(2004年製作の映画)
3.6
「たそがれ清兵衛」と同じく、幕末、地方の平侍の話である。タイトルにある隠し剣の技を唯一伝授された片桐が、謀反を起こしたかつての同士を討つ命を受ける。侍が主役の話において一番のメインイベントとなる派手な殺陣が描かれるのはこの討ち合いのシーンだが、話の見せ場となるのはまた別の部分であるというのがなんとも憎い。藩命には逆らえず、朋友を討たねばならない状況に追い込まれた主人公を案じ、苦い気持ちになった我々が最も爽快になる場面だ。はやすぎて最初は「!?」となるが、納得である。鬼の爪とはまさにこのことかと…。
時代の変化を示す、外国式の大砲や銃、走り方を訓練するシーンは、どこかシュールかつコミカルなタッチで描かれていて面白い。実際でもこんな感じだったのだろうな、とも思える。競走シーンが特に笑えた。
女中きえと片桐の身分違いの恋、という点においては、きえを演じる松たか子さんが麗しく、片桐がきえにだけ緩んだ雰囲気を見せるところが、泥臭さもなくてとても良かった。
ただ、場面があちこちに行ったり来たりして、展開が少しスローに映る部分もあり、全体を通しての見易さとしては少し難しいところもあった。それでも、タイトル回収の部分は短い割に見事だと思う。何かくすぐられるところがある…純粋にカッコイイ。
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