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さよなら歌舞伎町のthickwillのレビュー・感想・評価

さよなら歌舞伎町(2015年製作の映画)
3.3
飽きずには観れるショボイ「グランドホテル」。
ホテルモノの良いところは、やっぱりいろんな人間を見せられるところで、群像劇として一定の納得感を与えられるところ。
ただ、逆にいえば、「なんでこのホテルに何でもかんでも集まるの?」という違和感を感じさせる問題点もあり、染谷将太と前田敦子がまさにそれ。
妹だって来るし。
それが起こる必然性があればまだいいが、全くない。
「こまけぇことはいいんだよ」とは言い切れないご都合感がこの映画を支配している。

ケチをつければ、どのカップルの話ももれなくある。
まず、松重豊が外に出たがるアホさも必要ない。
妹の初体験を聞いて安心する染谷将太もバカ。
ゴルフ場でボコボコにされた忍成修吾がなんで解放されてるかも謎。
大森南朋を待たせてる前田敦子。どういう状況やねん?
んで、ヤリ終わったあと、何時間横たわってんねん!?
刑事二人のやりとりも本当にアホで、とっとと男が消えて署に連絡すればええやんけ。
韓国人カップルがいちばん納得感があったか。
まぁ、どれも浅薄でグッとくるものは何一つない。

この手の問題点というツッコミポイントってのはどんな映画もあるにはある。
すべて完璧であっても面白いわけでもない。
必要なのは、こういうツッコミポイントを超えた圧倒的な世界観があれば、ぶれいくするーしてくる。
あんなにバックヤードが小綺麗なラブホはないだろ?
綺麗に見せている裏側はもっと薄汚れていて、雑然としている。
それが時に美しく輝くのが素晴らしいのに、「綺麗に作ったセット」にしか最初から最後まで見えない。
前田敦子の部屋ですら、めちゃくちゃ綺麗。
「どうやっても売れないと」という悲痛な思いが生活に現れてほしい。
前田敦子が体を売ってまで売れたい理由が見えてこない。
そういう当たり前の生活の裏側に潜む、薄汚れながらも生きるしかない、そういう色めき立つ臭いを嗅ぎたい。
それらを根こそぎはいだ、空っぽの「それっぽい群像劇」がここにある。

歌舞伎町をナメんな。
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