COZY922

パパが遺した物語のCOZY922のレビュー・感想・評価

パパが遺した物語(2015年製作の映画)
3.5
失いたくないから、傷つきたくないから人を愛さないの?

幼い頃に両親を失ったトラウマから人を愛することや愛する人を失うことに極端に臆病な女性。愛したいし愛されたいのに、失うことを怖れて真逆のことをしてしまう。誰かまわず手当たり次第に寝て、自分の心の暴走に自分自身が一番戸惑っているかのようなケイティが自虐的で痛々しくて見ていられなかった。

物語はラッセルパパ目線の過去パートと、大人になった娘ケイティ目線の現代パートを行きつ戻りつしながら進む。過去パートの父の想いや愛情に触れて現代パートの娘を見ると、どうしても寂しさややり切れなさが増幅する。あれほどパパに愛された少女がセックス依存症になっている姿を見ると、大切なはずの ” パパが遺した物語 ” は彼女が生きていくうえでの力にはなっていないとしか思えず、それがが残念であると同時に 邦題との大きなギャップを感じてしまった。

ただ、ケイティ自身も自分の心の問題を自覚しおそらくずっと苦しんでいたのだと思う。だから大学でも心理学を専攻しソーシャルワーカーをしているのだろう。ケイティの荒れた行動に共感はできないけど心情は理解できる気がした。

愛すること、愛されること、愛に向き合うこと、亡くなった大切な人への想い、それをどう受け止めて今をどう生きるのか、そんなことを考えた。愛することで傷つくことはあるけど、とても大きくて他の何かでは代えがたいものを得られるのもまたもう一つの真実だと思うんだけど。

いろいろと考えることを促す物語という意味ではよかったけれど、正直ちょっと消化不良な部分が残りましたね。パパが書いた『父と娘』の内容や、パパが逝ってしまった後、彼女はどんな少女時代を送ったのかの描写が少しでもあったら、もっとずっと響いたと思う。

あと、邦題!ミスリードを誘うこの邦題よりも、原題のFathers&Daughtersのほうがずっといいと思った。
COZY922

COZY922