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野火のjojoのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.5
8月15日は終戦記念日。
この日が近づくと自然と「戦争」を描いた映画を観たくなる。

その戦争映画をざっくり2つのカテゴリーに分けると一方は、「戦場の兵士」を描いた作品、そしてもう一方は「戦時中の市民」を描いたものになるかと思う。

特に後者の作品では、日本人にとっては「火垂るの墓」という大傑作があり、さらに近年「この世界の片隅に」という新たな傑作が加わった。

「戦時中の市民」を知るには、この2作を観るだけでもう十分では?と思えるぐらいの強烈な力を持った作品だ。

そしてもう一方の「戦場の兵士」を描いた作品。

自分が小学生ぐらいの時に観ていた戦争映画と言えば、大抵は戦争系アクション映画であり、どちらかというと戦場でドンパチすることに、カッコよさを感じるものが多かった気がする。

それが徐々に戦場の恐ろしさを描いた作品にも興味が出始め、「プラトーン」や「フルメタル・ジャケット」などを観るようになった。

その中でも、戦場に行くなんてまっぴらごめんだ!と思わせたのはスピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」だ。

ホラー映画もビビって逃げ出す容赦ない残酷描写と、手持ちカメラによる、まるで本当に戦場に放り込まれたかのようなリアルな撮影のおかげで鑑賞後、強烈な「戦場の恐怖」を感じた。

だがそんな「プライベート・ライアン」をさらに超えた映画が現れた。

それが2015年公開の映画「野火」だ。

大岡昇平の小説を塚本晋也監督が映画化したもので、監督自ら主演もしている。

舞台は第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。

日本から遥か離れた島で、行き場を失いひたすら島をさまよい続ける兵士を、灼熱、病気、空腹、孤独という目に見えない敵が襲いかかる。

この「野火」が「プライベート・ライアン」と違うのは一人の兵士がジワジワと衰弱していく様子を、徹底的にリアルに描いている点だ。

塚本晋也監督の、もはや生きているのかどうかもわからないような極限状態の演技があまりにも尋常ではなく、観ていて目を背けたくなるぐらい辛くなってきて、餓死よりも戦死の方がマシなのでは?などと本気で思ってしまった。

そんなわけで僕が戦争を反対する理由は「Love & Peace」という理由よりも、「こんな悲惨な目に遭いたくないから」に尽きる。

もしこの「野火」を観て、それでも戦場に憧れる!ドンパチしたい!などと思う方がいたら、今すぐどこかのテロ組織に「就職」された方が良いと思う。

このお盆、良作の戦争映画を観て、戦争に対する自分なりの考え方を持つのもいいのではないでしょうか?
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