おかだ

クリムゾン・ピークのおかだのレビュー・感想・評価

クリムゾン・ピーク(2015年製作の映画)
4.5
オタク監督の面目躍如


月曜日の仕事終わりという最もモチベーションが低い夜に鑑賞したのは、ギレルモデルトロ監督によるゴシックロマンス映画の傑作「クリムゾンピーク」。

日本では劇場公開が比較的小規模だったようで、デルトロファンのおじさんと「イットフォローズ」と抱き合わせのホラーファン、そしてトムヒドルストンファンのお姉様方という限定的な客層以外にはやや知名度の低い作品。

しかしその出来栄えは圧巻で、デルトロ監督の病的なまでの美術のこだわりや、古典ゴシックロマンス映画へのリスペクトが死ぬほど込められた無二の大傑作でございました。


あらすじは、幽霊が見える小説家のイーディスが、トムヒドルストン演じる実業家(?)トーマスと恋に落ちて彼のイギリスの屋敷へ嫁いでいくが、その屋敷には恐るべき秘密が隠されていて。
という、嫁いだはいいものの系サスペンスホラー色強めの物語。

多くのレビュアーが語っているところだが、序盤のニューヨークでのラブロマンスがややかったるいのだが、いよいよ屋敷に到着して以降の映像美には目を見張る。

天井がめちゃくちゃ高い、いわゆるゴシック建築調の屋敷に入ってから、まずはゆっくりと上階に上っていくカメラに釘付け。
屋敷の内装のこだわりっぷりもさることながら、主要3人の衣装も素敵で、わけてもイーディスの衣装と髪型がよく映える。

もちろん、雪が積もった山頂に赤い粘土質の土が露出する赤と白のコントラストが刺激的な『クリムゾンピーク』のケレン味も素晴らしい。
そしてこれに関してはクライマックスのあの人物達の色彩とも合わさってとんでもない絵面に仕上がっている。

それからデルトロ印の人体欠損は今作でも健在だったな。

あとは冒頭と終盤、小説の綴じ込みという反復で物語を締める鮮やかな手つきも見事で、近年では「ストーリーオブマイライフ」なんかでも見られた演出。


さて、ところで注意しておきたいのは、この怪しげな屋敷という舞台やゴーストという要素、そしてサスペンス調の物語から、ゴシックホラー的ジャンル映画を想像を想起しがちであるが、あくまでも監督がコメントしている通り今作はゴシックロマンス映画の系譜であり、いわゆる悪霊退散系の展開をみないというポイント。

むしろゴーストは、主人公イーディスとかつて同じ立場にあり、彼女を救おうとしているということが終盤明らかになってくる。

ちなみにこのゴーストは、特殊メイクとスーツを着用した俳優が動きを演じていて、その独特の動作と微妙なそれぞれの色味の違いなど、ここもやけにこだわりを感じるディテール。

まぁなので、幽霊がワッと現れる怖さみたいなものはあまり無いのだが、しかし代わりにこれでもかというくらいジェシカチャスティンが大暴れしてくれるので安心されたい。
というか、あの終盤は笑っちゃうぐらいに怖かったな。
武器が、ペン⇨ナイフ⇨ナタ⇨スコップとどんどんイカつくなっていくケレン味も手伝って。

欲を言えばせっかくなので、あのスチームパンク感溢れる採掘機を終盤の展開に絡めても良かったんじゃあないかなぁとかは思った。


長くなったので纏めると、今作はコテコテにベッタベタな型に沿ったプロットと死ぬほどこだわった圧巻の映像美で魅せるゴシックロマンス映画の大傑作でした。

デルトロ監督っぽい青や緑の色調ではなく、分かりやすく赤や白が散りばめていてとても見やすいですし。

やはり多少のゴア描写は見られますが、それが耐えられる方には間違いなくおススメです。
特に映画館で観たかった。
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