COZY922

カリートの道のCOZY922のレビュー・感想・評価

カリートの道(1993年製作の映画)
4.0
一度観たら忘れられない印象的なオープニングとエンディング。空を切って焦点の定まらない目。担架で運ばれ薄れゆく意識の中で天井の照明を見ながらカリートの脳裏に浮かんだのは何だったのか。最愛の女性とのバハマでの堅気な生活、重ねてきた罪への後悔、裏切られても決して裏切らない男の美学を貫いたこと、それとも、見ることのできない命への祈り?冒頭で結末がわかる構成でありながら、繰り広げられるドラマに引き込まれて食い入るように見てしまう。

ドライになり切れば夢見ていた生活が手に入ったはず。裏社会でのかつての『名声』と筋を通そうとするその男気とがカリートを這いずり出ることのできない深みに引き込んでいく。昔気質で貸し借りを重んじる 不器用でとても人間くさいカリートの生き様が無性に愛おしくて愛おしくてたまらなくなった。

演技、音楽、演出、カメラワーク、どれを取り上げても素晴らしい。『スカーフェイス』の時よりも抑えたアル・パチーノの立ち居振る舞いが、足を洗おうともがく少し枯れた面持ちのカリートにぴったり重なる。駅での逃亡劇、特にエスカレーターのシーンは最後がどうなるかわかっていても緊迫感を強いられ、一縷の希望を持ちつつ手に力を込めて見てしまう。ショーン・ペンの狂ったように壊れてゆく弁護士の気違いっぷりも凄まじくよかった。

ラストシーンは胸が詰まる。「you are so beautiful」を聴きながらカリートが見たであろう夢を思い浮かべ、自然と涙がこぼれた。
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