mOjako

ドローン・オブ・ウォーのmOjakoのネタバレレビュー・内容・結末

ドローン・オブ・ウォー(2014年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

なるほどドローンを使った戦争ってゆう普段我々からは見れないものを見せてくれるだけでも観に行く価値はあるんじゃないでしょうか。

アンドリューニコルにしてはえらく地味というかシリアスな話でさすが自ら製作してまで作っただけのこだわりがあるんでしょうな。序盤は意図的にイーサンホーク演じる主人公が日常で行う任務の定型的な繰り返しが続きます。画面の向こう側で現実には殺戮が起こっているんだけど、主人公たちは淡々と冷静にルーティンとして業務をこなし定時で帰って家では普通に家族と夕飯を食べると。見せ方も考えられているとは思って、実際に現場でどんな悲惨な状況になっているかは一切見せずにイーサンホークの主観つまり爆発があっても無音で無機質な見せ方を徹底させています。殺人をモニター越しに見る主人公をスクリーン越しに見ているわけで、観客としても戦争の痛みや悲惨さを感じる余地がなくこんな戦争があると知れると同時にこれは確かに恐ろしいですよね。

ただ何も感じていないということを表現出来てはいるんですが、映画的にそれはどうなんだろうと思ったりもしました。戦争と娯楽の線引きって難しいところではあるんですが、戦争映画って昔から反戦メッセージを込めるのは前提としてある種の見世物としても存在してたと思うんです。「プライベートライアン」だったら戦争や銃撃戦を徹底したリアルで描くことで観客は戦争を追体験し、「フューリー」だったら最強タイガー戦車との激闘、「アメリカンスナイパー」だったら凄腕スナイパー同士の駆け引きという娯楽的な要素で観客の興味を引っ張ってた訳です。そこに批判があるのもわかるんですが、個人的にはそれは必要なことだと思ってて。だって本当に戦争をリアルに体験したらそれは娯楽には絶対になり得ないし目を背けることしか出来ないと思うんですよね。だからこそ、フィクションを通じてこそ我々は戦争を理解し向き合うことが出来るんだと思うので、まず興味を引く内容にするってことは意外と重要なことなんじゃないかと。その観点からすると今回の「ドローン・オブ・ウォー」は映るのはモニターを見る兵士だけで本当の戦場じゃないし何も感じない怖さを描いた分、個人的にはちょっと興味が持続しない瞬間もあった気がします。PTSDの描写にしてもあまり説得力がないと思って、例えば「アメリカンスナイパー」だったら普通の生活音に主人公が異常な反応をしたり運転中後続車に狙われいるんじゃないかと思ったりして狂気をわかりやすく画で見せてくれたんですが、今回はただ仕事とか夫婦が上手くいかないストレスを溜め込んだ男くらいにしか見えなかったんですよね。どうしても話がスケールダウンする感じは否めないです。

それと主人公がドローンでなく実際に空を飛びたいと思ってるキャラクターにしたのも微妙だと思いました。こんな無機質な業務をやってるから仕事への情熱も夫婦の関係も冷めるんだってことなのかもしれないですが、でもドローンて色んな批判も当然ではありますがアメリカ兵の安全を守るってことに対しては少なくとも多少の効果はあったんじゃないですかね。実際にパイロットとして戦地に行くなんてこと何の解決でもないし、正直何度も引き合いに出して申し訳ないですが「アメリカンスナイパー」見た後なので甘いこと言ってんなぁと思っちゃいましたね。アメリカンマッチョの思想なので日本人にはわかりにくい部分なのかもしれませんが、全体に主人公に対してもっと突き放した視点を持って欲しかったなぁと。

最後に"good kill"というタイトルが皮肉に響いてくるのは上手いしつまらない映画では全くないです。ドローンはもう現実に使われてるものなのでね。その現実を見て賛否含めて考えるだけでも観に行く価値はものすごくあると思います。
mOjako

mOjako