こうき

キャロルのこうきのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
3.5
何が良いかって、これ、1950年代という、レズビアンというものの存在が全く理解されない時代に、2人の女性がどうやって恋に落ちるのか。そのメカニズムがものすごく、心理的に、かつ、シチュエーション的に見事に表現されているんですよね。かたや、自分の性癖に気づき、自分の魅惑で積極的に迫り、もうひとりが、果たして自分がどちらの性を好むのかどうかさえわからず、迫られたことによってはじめて扉を開く。そのふたつの典型的なモデルを、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが絶妙なマッチングで演じていますね。ケイトは、この頃の女性の最高級に洗練されたファッションで、あの低い声を生かし、とことんカッコよくグイグイと迫り、ルーニーは、普段からあの無表情なお人形さんのような表情をひときわキョトンとさせながら、静かに自分の揺れる心情を自分の中で反芻させる。双方見事でしたが、特にルーニーの役柄の方が、表情の幅に限界のある役柄なだけに難しいですよね。そこを彼女はよく引き出せていたと思います。さすがにこれで、カンヌ映画祭の主演女優賞を受賞しただけのことはありました。
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