百合

キングスマンの百合のレビュー・感想・評価

キングスマン(2015年製作の映画)
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極上の、B級感

初爆音上映。没入感がすごいですね。やっぱり映画館はいい………
もうキャストの豪華さと映像美とテンポと音楽の暴力という感じで大変によかったです。コリンファース、なんなの…(絶句)
マシュー・ヴォーン監督は『キック・アス』でも監督を務めているということで、わたしは同作は見てないんですが、全力でB級をやってるバイオレンスアホ映画というイメージで…今回もその手腕は見事に発揮されています。もう笑ってしまうほどのバイオレンス、笑ってしまうほどのB級臭。コリンファースもマークストロングもどういう気持ちで撮られたのあのカメラに…
“Manners makes MAN”ということで非常に上品で上流階級然としたコリンですがこれがもう非常にカッコいい。もうカッコいいとしか言い表す言葉がない仕上がり。びしっとキマッたスーツ、絶えず表情を崩すことなく、ゆっくりと丁寧に低い声で話す英国紳士のお手本のような彼を映すカメラは、しかし驚くほどダサい。最初のターニングポイントとなるパブでのシーンでは思わず苦笑いしてしまいました。
「萌え」ポイントや「カッコいい」のポイントをどう組み合わせるかに終始する作品が多い中で、今作が埋もれなかったのはこのアンバランスの感覚ゆえでしょう。「孤独で荒れた青年、父代わりを果たす美しい紳士」「父親の超克、世代を超えた友情」といったわかりやすく惹きつけられるポイントを「スタイリッシュなスーツに武器」でくるっとラッピングしてしまった今作は、しかしその意識してダサい撮り方で「スパイ映画」を我々の手に取り戻し、地に足をつけたものにしてくれるのです。
構造として興味深かったのはコリンの「我々の人生は生まれで決定されるものではない」「時代は変わった」という信念が報われる、その報われ方です。過激な環境保護を突き詰めて選民思想に狂ったヴィランであるサミュエルLジャクソンですが、彼の秘書は義足の殺し屋(ソフィア・ブテラ)であるわけです。造形的にも非常にクールな彼女ですが、本来ならば彼女も「選ばれない」側の人間なわけです。にも関わらず自明のもののように彼は彼女を自らの隣に置いている。人間にボーダーを引いて、カテゴライズしてものを見るその愚かさと効果のなさを、非常にわかりやすい形で表現できています。
個人的にはコリンファースがアメリカの教会で無双するときの「私は軍の中絶センターで働く同性愛者のユダヤ黒人男性と性交した」と言うシーンにめちゃくちゃ笑いました。「悪魔を讃えよ」じゃねえよ。真顔で言うな。このシーンで流れるFree Birdですが“南部人の心の歌”と呼べるものだそうで。趣味が悪いぞマシュー・ヴォーン。
続編も来年1月に公開されるようですね!コリンの復活が見られるのは非常に嬉しい。必ず見に行きます。なるべくいいスクリーンで。
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