COZY922

ヘイトフル・エイトのCOZY922のレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
3.9
本作のターニングポイント第4章。それまで長い時間をかけてフツフツと沸き立ちつつあった血液が一気に沸点に達したように急展開を見せる! 1人、また1人と登場人物が死ぬ。血や肉片が飛び散る派手な殺され方。ひどく不謹慎だけどそこから意識は覚醒し体は金縛りになったように画面に釘付けになった。次は誰が殺られてしまうのか?腹の探り合い、牽制、威嚇の応酬。個人的には「密室ミステリー」という表現より「陸の孤島 山小屋での血で血を洗うサバイバル」というほうがしっくりくる作品だった。

第3章までは、タランティーノ映画ではおなじみの、登場人物たちがやたらとしゃべる会話劇。キャラクターの掘り下げや時代背景の描写だということを鑑みてもスローペース。が、前半のこのスローペースがまるでテコの原理のような効果となって指数曲線的に弾ける。狙って焦らしたのかどうかわからないけれど、反動が一種のカタルシスになった。

それにしても、タランティーノの映画はどぎつい描写なのに不思議と嫌悪感をあまり感じない。登場人物は紛れもなく悪人だけど 完璧過ぎずどこかヌケているせいかもしれない。 そのヌケた感じと悪ノリ加減が、白けさせない程度に巧みにリアリティを薄めて いい意味で観客との間に一線を引き、エンタメ映画としての昇華に繋がっているのかなと思う。

音楽もお腹に響く重低音が雰囲気にぴたりとハマっていたし、キャストも皆良かった。中でもやっぱりというか、さすがの存在感はサミュエル・L・ジャクソン。ティム・ロスとジェニファー・ジェイソン・リーの演技も際立っていたと思う。

ところで美術監督は種田陽平さんなんですね。本作の美術監督を務めていることを知らなかったのでオープニングのタイトルバックのクレジットで、名前が単独でドーンと表示されたのを見て同じ日本人として感動しました。
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