木元

駆込み女と駆出し男の木元のレビュー・感想・評価

駆込み女と駆出し男(2015年製作の映画)
4.0
面白かった。江戸時代後期の、駆け込み寺で起こるあれこれに、医者でもり戯作者志望でもある、大泉洋演じる主人公の信次郎が関わっていく話。
タイトルから想像するに、離縁にまつわる女性の悲しいあれこれが見られるのかなあと思っていたが、その予想は半分正解といった感じだったろうか。
実際には、戸田恵梨香と満島ひかり演じるキャラ二人によるシスターフッド的要素や、大泉洋演じる主人公とのラブストーリーなど、エンタメ要素ましましの気楽な作品として見ることができた。
とにかく情報量が多い――セリフ量が多い上に、ある程度江戸時代の娯楽や言葉遣いに関する事前知識がないと置いてけぼりになってしまう。うっかりしてるとぼんやり聞き流してしまうほどの量なので、役者たちは凄いなあなどと思った。
クズ男共から逃れ、男禁制の寺で連帯しつつ再起を図る女性たちの姿は、現代のフェミニズム映画を見ているようで良かった。歌ったり武芸の稽古をしたり農作業をしたり、見ているこちらも応援したくなるような姿だった。
それでも信次郎が医者として寺にやってきたときなんかは、「男」「男だ」と色めきたち、山賊みたいで笑ってしまった。出会った男がクズだっただけで別に恋愛に興味がないわけではないよなと。
だからこそ、主人公とヒロインの恋愛は映えたような気がする。男禁制の寺で、離れた場所でこっそり密会して愛をはぐくむ様なんかは、ベタだが見ていて微笑ましかった。
もちろんなんだかなあと思った部分もある。それは、物語的にあまり盛り上がりがないことだ。権力者たちと寺の戦いになるのか? と思った前振りもあっさり流されてしまったり、ちょこちょこ起きる問題も都度、解決していくので緊張状態もあまり長続きしない。当時の言葉で世界観を構築していくのかと思いきや、急に現代的な言葉遣いを突っ込んでくるのも結構ノイズだった。コメディといえば、まあそうなのだが。
と、色々述べたが満足できる内容だった。女性の連帯と、恋愛要素を盛り込んだ良作でした。
2023.43
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