アベ二ティKazumaAbe

ドクター・ストレンジのアベ二ティKazumaAbeのレビュー・感想・評価

ドクター・ストレンジ(2016年製作の映画)
3.7
全編通して面白かったか否か、映画として優れているかは別にしてもアメコミ実写化としてはかなり攻めていた印象。ヴィジュアルショックに関しては小池桂一の『ウルトラヘブン』(この場合メビウスか)を連想させるほど柔軟でハードコア、特にアメコミ好きじゃなくとも「こんな技ジャンプ漫画で観た!」と膝を打つような厨二全開戦闘シーンを実写で成功させた点、これは偏にmarvelユニバースの破竹の勢いあってこそとも思える。

気の利いたSF映画オマージュも楽しい。2001年〜とかマトリックスとかインセプションとか。これらを知らなくても充分楽しめるほどよく消化されているし、上記の作品観賞中「こんな風にキャラが動いてくれたら…」と願った大体のアクションは本作で実現している。ここに更にカンフー、シラット、ボーンシリーズの近接格闘のエッセンスも伺えて楽しい。

しかし難点もまた多い。繰り返されるつまんない説明台詞と冗長な会話、ちょっと安易にも思える各キャラクターの立ち位置、登場人物たちの全く笑えないギャグシーン…。凄いことやってんのはわかるけどややうだるアクションも散見。

以上から来る猛烈な睡魔に耐えれば、極上のトリップ映像とアメコミ映画史上最高のラスト20分に酔わされて泣かされる、そんな作品だった。ベネカンとミケルセンの演技合戦には団子のような鳥肌が立つし、やっぱり白眉の魔法シーンは本当に◎。ハリポタのモッサリ鈍臭魔法を一気に過去のものにするハイスピードマジックを映像にしただけでも十分に意味ある一作。